試料に外部から与えられた刺激に対し、試料がどのように反応するかを動的に観察する「その場観察技術」は、材料の研究に大変有効です。特に最近では機能を持った材料やデバイスが、実際にその機能を発現し動作している状況を観察する、“実働環境計測”が世界的に盛んにおこなわれています。しかしながら、電子顕微鏡での実働環境計測では電子顕微鏡観察を行う事からくる様々な制約があり、観察目的ごとに様々な工夫を行う必要があります。
本研究グループでは材料の実働環境計測をターゲットとし、これまで培ってきた電圧印加、ガス環境、液中観察などの実働環境計測法の更なる高度化ともに、大量データ取得と得られたデータの情報理論を用いた処理により、材料の観察によるダメージを抑えた観察手法の開発など電顕手法自体の高度化を行い、より高度で適用範囲の広い実働環境計測を実現することで、NIMSの材料研究者を始めとした材料研究全般に貢献していく事を目的としています。
図2.オペランド水素顕微鏡 (左) と同装置で計測した材料透過水素の分布(右上)。構造解析結果(右下) と比較すると、ステンレスの結晶粒ごとに、水と透過量が異なることがわかります。 オペランド水素顕微鏡は、NIMSで開発された水素の可視化装置です。走査型電子顕微鏡の中に電子励起脱離した水素イオンを検出する機構を追加し、薄板試料の背面に水素を導入する機構を組み合わせることで、試料を透過してきた水素の二次元分布を長時間にわたってin-situに計測することができます。ライセンス契約を結んだうえ、現在(株)エリオニクスから製造・販売されています1)。関連研究は、アーカイブページをご覧ください2)。
1) https://www.elionix.co.jp/keisoku/era_600h2
2) https://www.nims.go.jp/research/group/surface-physics-characterization/
実働環境電子顕微鏡開発グループ
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