正しく表示されない方はこちら
物質・材料研究の『使える!メールマガジン』
vol.143
2023.12.13
Si半導体量子ドット蛍光体の写真
今月の一枚
量子ドット蛍光体のイルミネーション
聖夜に煌めくイルミネーションのような物体は、シリコン(Si)半導体量子ドットの蛍光体。Si半導体はナノサイズの粒子にすると、「量子閉じ込め効果」により光を放つ。そのサイズを制御して発光スペクトルを変えることで、写真のような美しいグラデーションを作ることができる。NIMSでは、人体に無害なこの蛍光体を、がんの手術前に薬剤として投与し、がんの位置を正確に把握するバイオマーカーとして、同時にSiの光熱変換特性を利用して低侵襲的にがんを殺傷するなど、医療への応用を目指し研究を進めている。
for more detail
★ナノ粒子グループ
★光機能材料を理論と実験で開発
(北海道大学大学院総合化学院HP内)

※白幡直人グループリーダー(Si半導体量子ドット蛍光体の開発者):
北海道大学総合化学院教授を併任
INDEX
今月のメニュー
※Yahoo!メールのWEBブラウザ版をお使いの方は、
下記のリンクをクリックせずにスクロールしてお読みください。
HOT TOPICS(NIMSの旬な情報)
 
研究者の目のつけどころ Vol.13
「自己修復ゲルの簡便な作製技術」
 
U-35 ~材料研究の未来を拓く若者たち~
『File5 山下 侑』
 
HOT TOPICS
NIMSの最新情報をお届け!
形状記憶効果を呼び起こす新ポリマー材料の写真
■スゴイ湿気でもヘアスタイルが崩れない!
形状記憶効果を呼び起こす新ポリマー材料
プレスリリース 11/8
自己表現や自信に大きな影響を与えるヘアスタイル。特に雨の日や発汗時など湿気の多い場面では、ヘアスタイルが崩れてしまって困る……という方は多いはず。この度、NIMSは日本ロレアル(株)と共同で、湿気に応答して形状記憶効果を発動するポリマー材料を開発しました。髪の毛に塗って乾かすだけで、高湿度環境でも狙ったヘアスタイルをキープできる、新たなスタイリング材料への応用に期待大です!
NIMS NOW表紙写真 “極限”を攻める……!!
NIMS NOW最新号は“構造材料”号

自然災害との対峙やカーボンニュートラル達成のために、社会の屋台骨である「構造材料」はよりシビアな環境への適応力が求められています。極限環境に打ち克つ構造材料を実現し、人々の命や生活を守り抜くために——「構造材料研究センター」の挑戦に迫ります!

 
....and more!
 
ホモキラル二量体の図 熱や力によって分裂して色が変わる
ホモキラル二量体の合成に成功
プレスリリース 11/14
 
異方性磁気トムソン効果の模式図 磁性材料の熱電変換現象を磁化の向きで操る
プレスリリース 11/22
 
人工傾斜型多層積層体の模式図 新材料「熱電永久磁石」が
熱マネジメント技術の新たな可能性を切り拓く
プレスリリース 11/30
 
白金族元素を使わない電極材料の探求の模式図 進化するAIがエコな水素の普及のための
新規材料開発を支援する
プレスリリース 11/30
 
 
NIMS公式ウェブサイト
 
TECHNIQUE
技術革新のキモ、ここにあり!
研究者の目のつけどころ
自己修復ゲルの写真
Vol.13
自己修復ゲルの簡便な作製技術
~切れても自然に元通り!? 強くてリサイクル可能な超高分子量ゲルを簡単に作る!~
 
スマートウォッチ、スマートグラス、スマートバンドなど、体に装着するコンピュータ「ウェアラブルデバイス」。音声認識機能やセンサを搭載することで、メールやSNSのチェックなどスマートフォンのような使い方ができるほか、運動を記録する、心拍や睡眠時間などをモニタリングして健康管理に役立てる、現実世界と仮想世界を重ねて表示するなど、アイディア次第で幅広い使い方が可能な電子デバイスだ。
更なる用途拡大と快適性を目指す次世代のウェアラブルデバイスには、従来以上の軽さや柔軟性、強度が求められる。それらを満たす材料として高分子材料、特に、損傷しても自発的にそのキズを修復する「自己修復高分子材料」が注目され、世界中で盛んに研究が行われてきた。しかし、その作製には精密な合成や複雑な工程が必要な場合が多く、いかにプロセスを簡素化できるかが、実用化への大きな課題のひとつとなっている。 自己修復ゲルの写真と模式図
超分子量ポリマーの高分子鎖が良く絡み合い、かつ、その絡まりがほどけない状態を保てるため、強度が高く、高温でも長時間、形状を維持することができる。
この自己修復高分子材料を、これまでとは全く違うアプローチで、簡便に作製する技術を考案したのが玉手亮多研究員だ。玉手は、高分子のもともとの特徴である「高分子鎖の絡み合い(上図)」を利用できないかと考えた。
圧縮試験の比較写真
圧縮試験を行ったところ、従来のアプローチで作製した「化学架橋ゲル」は60%の圧縮で壊れてしまったが、「自己修復ゲル」は90%圧縮しても元通りに復元した。
そこで目を付けたのが「イオン液体」だ。イオン液体はイオンのみから成る液体で、揮発しない、燃えない、熱的にも化学的にも高い安定性を示すなどの利点を持つ。従来、高分子材料の重合(※注)には有機溶媒が用いられてきたが、玉手はこの有機溶媒をイオン液体に変えることで、高分子の重合反応がよく進むことを利用しようと考えた。
実際にイオン液体中で、超高分子量ポリマーを合成したところ、重合反応によって高分子鎖が効率よく絡み合い、高強度と高い自己修復性を兼ね備えた「自己修復ゲル」が誕生した。
この自己修復ゲル、1トンの負荷をかけ、90%を圧縮しても破断しないという驚異の強度を誇る(上図)。また、ゲルを切断し、切断面同士を接着させると、室温6時間ほどで元のゲルと同等の引っ張りに耐えられるという、高い自己修復性も実証した(上写真)。さらに、熱を加えればリサイクルも可能で、リサイクル前後で強度がほぼ変わらないことも確かめた。
自己修復ゲルのリサイクル前後の写真
加熱・加圧することで、何度でもリサイクルが可能。
玉手研究員の顔写真
「機能発現の原理解明やデバイス適用など基礎・応用両面で研究を深め、材料の社会実装に向けて取り組んでいきたいです」(玉手亮多研究員)。
「イオン液体中で重合反応を促進させる、という極めてシンプルな作製手法です。有機溶媒を使用しないため環境負荷も少なく、リサイクル性にも優れているので、近年、特に重要視されている循環型経済にも貢献する自己修復材料と言えます」と玉手。現在、さらに詳細なメカニズムの解明を進め、更なる高機能化を目指しているという。
作製の簡便性、強度、自己修復性、そしてリサイクル性にも優れたこの自己修復ゲルによって、私たちの想像を遥かに超える全く新しいデバイスが登場するかもしれない。玉手の研究から、今後も目が離せない。
(※)重合:モノマー(単量体)を反応させてつなぎ合わせ、ポリマー(重合体)を合成すること。この成果ではラジカル重合という手法を用いて重合反応を行っている。
もっと知りたい! 自己修復ゲルのキモ
★プレスリリース(2022.10.20)「超分子量ポリマーの
絡み合いで簡便に創製できる自己修復ゲルを開発」
★研究者情報:玉手亮多
RISING STAR
材料研究の“期待の星”
山下侑研究員の写真
 
簡単なプロセスで作製できる高機能な半導体の研究をしています。半導体は、ディスプレイや通信機器、太陽電池など、私たちの身近にある様々な電子デバイスに使われています。今、主流のシリコン半導体は、作製する際に高い温度や真空など特殊な環境が必要ですが、私は軽量で柔軟な有機物を使って、インクジェット印刷など簡便かつ低コストで作製できる、……
\続きは特設サイト「材料のチカラ」でお読みいただけます/
  続きを読む  
 
※「U-35」では、博士の学位取得後8年未満の研究者を支援する「科学研究費助成事業(科研費)・若手研究」の応募資格者(おおよそ35歳以下)を対象に、NIMSで活躍する研究者やエンジニア、その研究を支える事務職員をご紹介します。

※本メールマガジンは、配信を希望された方にのみ、お届けしております。
※本メールマガジン掲載のテキスト、画像、または一部の記事の無断転載および再配布を禁じます。

国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS) 広報室
〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1

登録解除
 
©国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)