正しく表示されない方はこちら
物質・材料研究の『使える!メールマガジン』
vol.141
2023.10.18
フォトニックラバーの写真
今月の一枚
フォトニックラバー
虹色の光沢が美しい10月の誕生石・オパール。そのオパールと同じ「構造色」という原理で発色しているのが、NIMSのフォトニックラバーだ。極小のポリスチレン粒子の自己集積を利用し、一度の操作で数十層にわたって規則的に並んだ粒子配列膜を作製することで、見る角度や変形によって色が変化する機能を作り出している。NIMSでは、このフォトニックラバーを低コスト&軽量化した「構造色シート」を橋やトンネルに貼り、色の変化によって、それら構造物の老朽化を簡便に見分けられる技術を開発している。
for more detail
★広報特設サイト『材料のチカラ』
「この材料、あなたなら何に使う?」
#01フォトニックラバー
★NIMS使える!メールマガジンNo.109
「今、この材料がアツい!Vol.2:構造色材料」
INDEX
今月のメニュー
※Yahoo!メールのWEBブラウザ版をお使いの方は、
下記のリンクをクリックせずにスクロールしてお読みください。
HOT TOPICS(NIMSの旬な情報)
 
今、この材料がアツい! Vol.14
「液晶高分子ソフトアクチュエータ」
 
U-35 ~材料研究の未来を拓く若者たち~
『File4 飯村 壮史』
 
HOT TOPICS
NIMSの最新情報をお届け!
耐熱材料の新手法の図
AIと研究者の最強コラボ!
新手法で耐熱材料を強くする!
プレスリリース 9/25
析出物で強度が向上するタイプの金属材料にとって、熱処理は強度を決定する重要なプロセスです。しかし、例えばNi-Al合金の高温強度を向上するという事例では、熱処理の温度と保持時間の組み合わせが35億通りにも上り、全てを試すのは現実的ではありませんでした。そこでNIMSは、AIを用いて探索を行い、110通りの有望な組み合わせを発見。それらは、一見すると人間には思いつかないような奇抜なものばかりでしたが、研究者が解析したところ、絶妙な制御をしていることが明らかに。そこから着想を得て、AIの提案より更に高温強度を向上できる「二段熱処理法」を考案しました。AIと人のコラボによって生まれた好事例、今後、様々な応用に期待大です!
 
....and more!
 
ブレース型制振ダンパーの図 長周期・長時間地震動に有効な
ブレース型FMS合金制振ダンパーの適用範囲を拡大
プレスリリース 9/26
 
 
NIMS公式ウェブサイト
 
TREND
材料の潮流をつかめ!
今、この材料がアツい!
液晶高分子ソフトアクチュエータの写真
Vol.14
液晶高分子ソフトアクチュエータ
~離れた場所の感覚を伝える! 遠隔診療の未来を担う柔らかいアクチュエータ~
 
コロナ禍を経て、「遠隔診療」を導入する医療機関が増えている。インターネットを通じて診察や診断、処方などを行う遠隔診療は、高齢者や通院が難しい患者に対しても、継続的に医療を提供できる手段としてメリットが大きい。現状ではオンラインでの問診が主流だが、もし、離れた場所からでも患者の体に触れる“触診”を実現できたら——診察のみならず、例えばリハビリなど様々な場面で遠隔診療の幅が広がるだろう。
離れた場所の感覚を伝えるには、触ったときの振動や力の強度などを的確に捉えるセンサ、そして、それを再現するアクチュエータが不可欠だ。そこで、本当に触っているかのような繊細な感覚を表現するため、柔らかいアクチュエータを開発しているのがNIMSの吉尾研究員だ。吉尾は柔らかいアクチュエータのアイディアとして、高分子の中をイオンが動き回る性質を持つ「イオン導電性高分子」に目を付けた。 カラム構造の図
イオン性液晶分子とイオン液体を混ぜると、自発的にこの筒状のカラム構造を形作り、陽イオンと陰イオンを持ったイオン液体がカラムの中に入る。この状態で紫外線を照射すると、膜が得られる。
大きさに差のある陽イオンと陰イオンを含んだ「イオン導電性高分子」で膜を作り、それを電極で挟んで電圧をかける。すると、負極側に大きい陽イオンが集まり、正極側に小さい陰イオンが集まって、結果的に負極側が伸びる(下図)。この原理を、膜を曲げるアクチュエータに利用しようと考えたのだ。
液晶高分子ソフトアクチュエータの仕組みの図
カラム構造を持った膜を電導性高分子の電極で挟み、電圧を印加すると、イオンが動き出し、大きい陽イオンが集まる負極側の膜が伸びて曲がる。
そして、イオンを効率よく移動させるために、吉尾はもともと自身の研究対象としてきた、筒状のカラム構造を持つ液晶(上図)を採用。カラム構造の中にイオンの通り道を整え、イオンがまっすぐ進むように設計することで、応答が速く、ダイナミックに曲がる「液晶高分子ソフトアクチュエータ」を実現した。
自重の20倍もの物を持ち上げるほどのパワーを持ち、耐久性にも耐熱性にも優れるこの新しいアクチュエータ。しかし、遠隔診療への応用には性能がまだ足りなかった。その後、吉尾は改良を続け、より高速なイオン移動と高強度を兼ね備えたアクチュエータの作製に成功。ヒトの皮膚が感じる刺激の再現に、確実に近づいている。
さらに、素子が切れても自然に自己修復するアクチュエータや、変形することで発電する液晶材料など、アクチュエータと液晶の両面から様々な材料開発に挑んでいる。「これらの技術を、将来的には、視覚障害者の方が指につけることで歩行を支援する触覚提示素子や、環境振動発電へとつなげていくのが目標です」。医療だけでなく、様々な社会課題の解決が期待できる吉尾の研究から、今後も目が離せない。 吉尾研究員の写真
「今年度は、消火器成分にヒントを得た自己消火性アクチュエータや生体分子由来の液晶高分子を使った生分解性アクチュエータなどの開発に成功しました。今後も、液晶分子を活かした未来メカトロニクス材料の創製に取り組んでいきます」(吉尾正史研究員)。
もっと知りたい!
アツい液晶高分子ソフトアクチュエータの世界

★NIMS NOW Vol.22 No.1「『感じる』と『動かす』の革新」
P12-13「液晶のカラム構造がイオンのハイウェイとなる
柔らかく安価な高分子アクチュエータ」

★分子メカトロニクスグループ
アクティブソフトマテリアル (外部刺激応答性) の開発
デバイス応用 (ソフトロボット・触覚用アクチュエータおよびセンサー)

RISING STAR
材料研究の“期待の星”
飯村壮史研究員の写真
 
水素の陰イオン(H-)の高い還元力を活かす技術の開発をしています。鉄は酸化すると錆びてもろくなってしまいますよね。石油や天然ガスも、エネルギーとして利用して酸化すると、二酸化炭素が発生してしまう。でも、H-を使うことによって、それらを戻す——例えば、錆びた金属を元に戻す、二酸化炭素から天然ガスのメタンやメタノールを生成する、ということが可能になります。こうした、酸化とは逆の還元技術を開発し、……
\続きは特設サイト「材料のチカラ」でお読みいただけます/
  続きを読む  
 
※「U-35」では、博士の学位取得後8年未満の研究者を支援する「科学研究費助成事業(科研費)・若手研究」の応募資格者(おおよそ35歳以下)を対象に、NIMSで活躍する研究者やエンジニア、その研究を支える事務職員をご紹介します。

※本メールマガジンは、配信を希望された方にのみ、お届けしております。
※本メールマガジン掲載のテキスト、画像、または一部の記事の無断転載および再配布を禁じます。

国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS) 広報室
〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1

登録解除
 
©国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)