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物質・材料研究の『使える!メールマガジン』
vol.135
2023.4.12
超撥水ナノ粒子をまとった水滴の写真
今月の一枚
ナノの地球
青く美しい地球のような物体は、超撥水性を持つナノ粒子で表面を覆った水滴。このナノ粒子を食品容器の内側に塗布すると、液体を強力に弾く性質から、レトルト食品やドレッシングを無駄なく使い切ることができ、フードロス改善や洗浄に要するエネルギー削減などに貢献できる。4月22日は環境保護を考える国際アースデー。NIMSではこのナノ粒子の他にも、環境問題の解決を目指す様々な材料・技術の開発を行っている。
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★MA-NanoArt 014『ナノの地球』
★国際ナノアーキテクトニクス(MANA)拠点HP
“Moons or marbles?”
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HOT TOPICS(NIMSの旬な情報)
 
研究者の目のつけどころ Vol.9
「気体識別用感圧デバイス」
 
★新企画★
U-35 ~材料研究の未来を拓く若者たち~
『File1 門脇 万里子』
 
HOT TOPICS
NIMSの最新情報をお届け!
粘土粉末の写真
加温も触媒も必要なし!
粘土だけで化学反応を加速させる新技術
プレスリリース 3/22
化学反応を加速するには、反応時の温度を高めたり、物質の濃度を上げたり、希少金属を含むことが多い触媒を利用するのが一般的。しかし、NIMSは地球上に遍在する粘土だけで、化学反応を加速できることを見出しました。エネルギーも希少金属も必要としない、エコで低コストな新技術に期待大!
hbnの写真 『まてりある’s eye』新作動画!
世界中の研究者が欲しがる
NIMS発の単結晶

2010年ノーベル賞で注目を集めた、炭素原子一層の物質グラフェン。従来の半導体より電子の移動度が格段に高い性質から、量子コンピュータなどの理想的な素子と成り得る材料として、世界中で研究が進んでいます。今回は、このグラフェン研究になくてはならない、hBNという単結晶のお話。NIMSにしか作れないhBNの正体と誕生秘話に迫ります!

NIMS NOW2022の写真 材料の最新トレンド丸わかり! 
NIMS NOW最新号は
“Research Digest 2022”

未来材料のタネや実用化に至る重要な発見の数々が並ぶNIMSのプレスリリース。最新号では、2022年に公開されたプレスリリースの中から厳選した10トピックをダイジェストでご紹介します。この一冊から材料の最新トレンドが見えてくる!

 
....and more!
 
オキサイドとNIMSのロゴ オキサイドとNIMS、スタートアップ支援に向けて
連携覚書を締結
プレスリリース 3/24
 
 
NIMS公式ウェブサイト
 
TECHNIQUE
技術革新のキモ、ここにあり!
研究者の目のつけどころ
気体識別デバイスで可視化した気体の写真
Vol.9
気体識別用感圧デバイス
~気体が“見える”!? 透明な気体を手軽に可視化・識別する新手法~
 
美しく光り輝くタマムシ色——この正体が、“気体”だというのだから驚きだ。無色透明な気体を、色鮮やかに可視化したのはNIMSの柴研究員。柴は気体を流入して「構造色(※)」を発現させることで、気体を色によって識別できるデバイスの開発に成功した。
目に見えない気体をどうやって見分けるか。これまで、赤外線カメラを使って気体の温度変化を観測する、微粒子を空気中に分散させるなど、様々なアプローチが試されてきた。しかし、従来の手法では、高価で特殊な装置や複雑な前処理が必要なうえ、たとえ可視化できても画像から気体の分析までを行うことは困難だった。 気体流入の模式図
PDMSとガラスが密着している界面に気体を流入することで、PDMSの内壁が圧力によって歪み、構造色が発現する。
構造色の写真
PDMSをプラズマ照射した部分にできるひだ状の微細構造。気体を流し込んだ時に、この構造が変化することで、気体によって様々な構造色が発現する。
一方、柴が開発した「気体識別用感圧デバイス」は、安価なシリコーンの一種「ポリジメチルシロキサン(PDMS)」とガラスのみでできている。PDMSの片面の一部にアルゴンプラズマと酸素プラズマを照射し、ガラスと張り合わせればデバイスの完成だ。
このPDMSとガラスの密着部分に気体を流し込むと、プラズマ処理部に形成されていた微細構造が気体の圧力によって歪み、構造色が発現する。構造色は気体の粘度や密度によって見え方が変わるため、一定量を流すことで気体の種類を識別することができるのだ。
現在、環境ガスや生体試料の測定への応用を目指し、デバイスの感度向上や最適化に取り組んでいる。また、画像認識や機械学習と組み合わせて、識別技術の確立やより簡易な小型デバイスの作製も模索中だ。
見えない気体を色彩豊かに映し出す低コストかつ超シンプルな新手法。今後どんな展開を見せるのか——柴の研究から目が離せない。
芝研究員の写真
「実験中は、気体の流れによって変化する色やその美しさを、ただただ楽しんでいました。これからも興味に忠実に、様々な現象を楽しみつつ、世の中の役に立つものを創り出していきたいです」(柴弘太研究員)。
(※)構造色:その物質自体に色はないが、光の波長程度の間隔で整然と配列した微細構造により、角度によって多様な色が見える現象。身近な構造色には玉虫、コンパクトディスク、シャボン玉、オパールなどが挙げられる。
もっと知りたい! 気体識別用感圧デバイスのキモ
★プレスリリース(2022.11.28)
「気体が玉虫色に『見える』」
★NIMS NOW Vol.23 No.2『Research Digest 2022』
P.4「気体が“見えた”!」
RISING STAR
材料研究の“期待の星”
門脇万里子研究員の写真
 
金属の腐食(さび)に関する研究をしています。金属は建物や自動車、燃料電池などの小型製品、生体材料など身の回りのあらゆるところで使われていますが、その最大の弱点とも言えるのが腐食です。学生時代から「どうしたら腐食に強い金属が作れるか?」を日々探求し、鉄に炭素や窒素を添加すると耐食性が向上することを実証しました。今は、既存材料の更なる耐食性の向上と新規材料の開発を目標に、実験に加え、合金の作製やシミュレーション、材料の評価など様々なアプローチで研究を行っています。
子供の頃から理科は好きでしたが、科学者になりたいと思ったことはなくて(笑)。高校で進路を考えていた時に、東北大のオープンキャンパスで見学した材料学科がすごく面白そうだったんです。具体的に何がしたいとは決まっていませんでしたが、材料は分野が幅広いので、大学で何か見つかるかな、と淡い気持ちで進学しました。 腐食の促進実験の写真
自ら合成した金属を塩水に浸し、電流を流して腐食を促進させ、その解析まで行う。実験プランはもちろん、装置の組み立てなども自身で行う。
そして出会った研究が“腐食”です。製品の劣化や大事故の原因につながる腐食——そのメカニズムを解明して、耐食性に優れる金属を作りたい。研究を続けるうち、そう強く思うようになりました。そんな中、大学院博士課程一年目にインターンシップとしてNIMSに3か月、滞在しました。最先端の現場で珍しい装置を使いながら、多くを学ぶことができた刺激的な毎日でした。なので、NIMSに就職が決まったときは本当に嬉しかったですね。
門脇研究員と片山グループリーダーの写真
研究の相談に快く応じてくれる片山英樹グループリーダーは心強い存在。「やりたいことを伝えると環境を整えてくださって、新しい挑戦をいつも応援していただけるのが嬉しいです」。
NIMSに来て3年目になりますが、恵まれた環境の中、自由な裁量で充実した研究生活を送れています。NIMSの魅力のひとつだと思うのが、「材料研究ならNIMS」と言われるとおり、様々な材料分野のトップ研究者が集まっていて、その方々にアクセスしやすい点です。
私は実験による腐食挙動の解析が専門ですが、計算や理論、鋳造・鍛造など分野外のこともその道のエキスパートに助言をいただきながら取り組んでいます。新しいことにチャレンジしやすい雰囲気もNIMSの特長だと思いますね。
今は主に鉄鋼材料とアルミニウム合金を対象としていますが、将来的にはもっと色々な材料の腐食を研究して知見を広げたいです。海外も含め、企業や他機関との共同研究にも積極的に挑戦したいと思っています。
門脇研究員と合成装置の写真
研究が成功したときの達成感はひとしお。「ただ、うまくいくことばかりではないので、ひとつの実験に没頭するというよりは、いくつかの実験を同時並行して『もしダメでもこっちがある』という風に、悲観的な状況を作らないような工夫をしています」。
~ 門脇研究員のキャリアパス ~
2009.4~2012.3 三重県四日市高校
2012.4~2016.3 東北大学 工学部
2016.4~2021.3 東北大学大学院 工学研究科
【2018.4~2018.7  NIMS(腐食特性グループ)へインターン】
2021.4~ 現職
 
\のぞいてみよう! 門脇研究員の仕事のゲンバ/

★NIMS研究者総覧SAMURAI「門脇万里子」

★「ロレアルーユネスコ女性科学者日本奨励賞」受賞のニュース

★「進路で人生どう変わる?理系で広がる私の未来2022
ロールモデル経験談2」(内閣府男女共同参画局公式YouTube動画)

 
※「U-35」では、博士の学位取得後8年未満の研究者を支援する「科学研究費助成事業(科研費)・若手研究」の応募資格者(おおよそ35歳以下)を対象に、NIMSで活躍する研究者やエンジニアおよび、その研究を支える事務職員をご紹介します。

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国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS) 広報室
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