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物質・材料研究の『使える!メールマガジン』
vol.134
2023.3.15
形状記憶高分子の写真
今月の一枚
形状記憶高分子のぼんぼり
ひな祭りを彩るぼんぼりのような物体は、生分解性の形状記憶高分子から成る治療用デバイス。温度応答性に優れ、4~5℃という世界で最も狭い温度幅で形状を変化させることができる。NIMSではこのデバイスを用いて、細胞や組織に力をかけて治療を促す、“薬によらない治療”の可能性を追求している。
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★NIMS NOW(Vol.22 No.6)からだマテリアル
P6-10『医療を変えるバイオマテリアルを』
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HOT TOPICS(NIMSの旬な情報)
 
NIMS装置図鑑 Vol.9
「磁性多層膜積層用全自動クラスター成膜装置」
 
オトナの科学本 『陶説 No.827 板谷波山の陶芸』
 
HOT TOPICS
NIMSの最新情報をお届け!
リチウム空気電池の模式図と固体電解質の写真
実用化に大きく前進!
リチウム空気電池のサイクル寿命を大幅向上
プレスリリース 1/31
高いエネルギー密度と軽量を兼ね備えた「リチウム空気電池」。NIMSではその劣化の主要因を解明し、劣化を抑制する保護膜を電池内に導入することで、課題であったサイクル寿命を大幅に向上させることに成功しました。“究極の二次電池”の呼び声高い空気電池の実用化に、大きな一歩です!
単結晶X線回折装置の写真 研究の自動化はここまで来た! 
NIMS NOW最新号は
“スマートラボ”特集

今、研究現場では人の手がロボットへ、頭脳がAIへと置き換わる「スマートラボラトリ」が急速に普及しています。材料探索スピードの加速のみならず、後継者不足の解消や“研究の質”の安定化にもつながるスマートラボ化。どのような戦略のもと、どこまで進んでいるのか——今号ではその最前線をお伝えします!

 
NIMS公式ウェブサイト
 
DEVICE
NIMSが誇る装置をピックアップ!
NIMS装置図鑑
成膜装置の写真
Vol.9
磁性多層膜積層用
全自動クラスター成膜装置
~次世代メモリの開発競争に貢献! 薄膜を自動で積層できる巨大複合装置~
 
暗闇の中で銀色に浮かび上がる装置群——全景を一枚の写真に収めるのに、2mもの脚立に上って撮影された巨大なそれは、次世代メモリとして開発競争が激化するMTJ素子(※)を高品質かつ高速で作製できる「磁性多層膜積層用全自動クラスター成膜装置」だ。
HDD磁気ヘッドや磁気抵抗メモリ(MRAM)などに使われているMTJ素子。ナノサイズの薄膜が約60層も重なることがあり、非常に繊細な構造を持つ。この素子の性能を高めるには、各層の新規材料の探索に加え、異なる材料を的確に積層することがキモとなる。 電子ビームを充てている基板の写真
電子線蒸着装置室内で、電子ビームを充てながら成膜している様子。
成膜装置を下から映した写真
搬送ロボット室の真下から撮影した様子。無数の導線が各装置をつなぐ。
それらの作業を可能な限り自動化し、開発スピードの向上を狙ったのがこの複合装置なのだ。
搭載されているのは、2種類のスパッタリング装置と電子線蒸着装置、そして分子線エピタキシー装置の4つ。材料探索の基礎研究から、実用化を見据えた大面積・低コストの手法まで、様々な成膜を試すことができるラインナップだ。それらの装置が、中央の搬送ロボット室を介して連結され、壮大な装置群を形作っている。
操作はいたってシンプルだ。土台となる基板を搬送ロボット室にセットしたら、装置横のコントロールPCで積層の手順を指示。
すると、ロボットが動き出し、基板が各装置へと搬送され、自動的に成膜を開始する。ひとつの成膜が終わればまた次の装置へと、あらかじめ組まれたプログラム通りに成膜を繰り返していく。
「この装置によって、作製速度はそれまでの約4倍にまで向上しました。
装置モニターの写真
モニターを見ながら成膜中の様子をチェックする葛西研究員(左)と、ともに装置開発を手掛ける介川裕章研究員。
葛西研究員の顔写真
「装置自体はほぼ完成し、ここからが成果を求められるところです。今後、スピントロニクス材料を出発点として、各種積層構造の自動設計・自動最適化が可能になることを期待しています」(葛西伸哉研究員)。
また、一枚の基板上に様々な組成の薄膜を作製できるので、多様な条件を一度に検証することも可能です」と装置開発者の葛西研究員。
現在、更なる効率化を目指し、成膜プロセスの設計や最適化も装置自らが担えるように改良を重ねている。「最終的には、測定まで含め全プロセスを自動で行うことができるようにしたい」(葛西)。次世代メモリへの突破口を開くべく、最強の装置を携えて葛西の研究は続く。
(※)MTJ素子:強磁性金属の間に絶縁体(トンネル障壁材料)を挟んだ構造で、強磁性体の電子スピンの向きに応じて電気抵抗が変化する「トンネル磁気抵抗効果」を利用して“0・1”の記録を読み出す。
もっと知りたい! 
磁性多層膜積層用全自動クラスター成膜装置のウラのウラ
★NIMS NOW Vol.23 No.1:SMART LAB.号
P3-5「複合化した成膜装置で材料の性能を最大限引き出す」
★スピン物性グループHP
BOOK
どっぷり浸かるサイエンスの世界
オトナ科学本
本の表紙写真『陶説  No.827  板谷波山の陶芸』と山浦研究員
『陶説 No.827 板谷波山の陶芸』
日本陶磁協会 発行
 
量子物質創製グループ・山浦研究員のおススメ!
先日、茨城県陶芸美術館で開かれていた板谷波山の企画展に行きました。波山はNIMSのあるつくば市の隣、筑西市が生んだ工芸家です。自ら制作した陶器の表面に繊細な彫刻を施し、初期のアール・ヌーヴォーから着想した可憐な色遣いとマットな質感を組み合わせるという、斬新で美しい作品を数多く残しています。この企画展を見ながら、科学の力をふんだんに取り入れた波山の偉業に何とも驚かされました。
科学の力? どういうことかというと(笑)、陶器は別名「セラミックス」。昔は“窯業”という主に陶芸を研究する学問分野があって、そこから無機化学の分野へと発展し、現在の機能性セラミックスにつながっています。陶芸はもともと科学だったんですね。そして、陶器に色を付けるために波山が用いた塗料は、酸化鉄(赤)、酸化クロム(緑)、酸化コバルト(青)など元素を組み合わせたものでした。さらに、最大の特長であるマットな質感は、炭酸マグネシウムが酸化マグネシウムに変化する過程の化学反応を巧みに利用することで表現しています。芸術的センスに加え、科学の知見が随所に盛り込まれているのが、波山の陶器なのです。
企画展は残念ながら終了してしまいましたが、こちらの本で彼の作品と制作活動の足跡を辿ることができます。科学が生み出す美しい造形を、ぜひ堪能してみてください。
 
あらすじ

日本陶磁協会が発行する月刊誌。No.827では、板谷波山の生誕150年を記念し、繊細で麗しい作品の数々と波乱に満ちた生涯が紹介されている。協会HPで購入可能。

 
— 読書案内人 —

山浦一成(やまうら・かずなり)

国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 ナノマテリアル分野
 量子物質創製グループ グループリーダー

量子機能性材料の特性向上や新規開拓に従事。研究に加え、NIMS連携大学院の教授として学生の指導にも取り組むほか、NIMS公式YouTubeチャンネル「まてりある’s eye」で大人気の「分解シリーズ」を手掛けるなど、材料研究の発信にも尽力している。

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