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物質・材料研究の『使える!メールマガジン』
vol.122
 
2022.2.9
リキッドマーブルの写真
今月の一枚
リキッドマーブルパッチワーク

カラフルなラッピングペーパーで包んだバレンタインチョコのような物体はリキッドマーブル。リキッドマーブルとは液滴を撥水性の粉末で覆い、カプセル化したもの。NIMSでは様々な機能を加えた撥水性粉末をパッチワークのようにつなげて被覆した、多機能なリキッドマーブルを開発。細胞培養、ドラックデリバリーをはじめ、液体輸送の小型キャリアとして幅広い応用が期待されている。

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ダイヤモンドトランジスタの構造の写真
逆の発想で高特性化! 
ダイヤモンドで高移動度トランジスタを実現
プレスリリース 2022/1/18

半導体として優れた特性を持つダイヤモンド。ただ、トランジスタ構造にすると、ダイヤモンド本来の特性が十分に発揮できていませんでした。そこでNIMSは従来と逆の発想で新たな作製手法を考案し、高性能なダイヤモンドトランジスタの開発に成功! パワーエレクトロニクスや情報通信など、幅広い応用に期待大!

NIMS NOWセンサ・アクチュエータ号の表紙写真
「感じる」と「動かす」の革新
 センサ&アクチュエータ特集

フィジカル空間とサイバー空間をつないでより便利な社会を目指す「Society5.0」構想。その実現の大きなカギを握るのが、情報を捉えて電気信号に変えるセンサ、そして電気信号を実際の動きに変えるアクチュエータ。NIMS NOW最新号では、今後求められるセンサ&アクチュエータの最先端に迫ります!

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蓄電池イノベーションの最前線
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プレスリリース 2022/1/25

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TECHNIQUE
技術革新のキモ、ここにあり!
研究者の目のつけどころ
CFRPと炭素繊維の写真
Vol.4
CFRPの新リサイクル技術
~水溶液に浸すだけで分解! プラスチックの環境汚染を解決する新戦略~

鉄の10倍もの強度を持ち、軽量で、熱にも強い炭素繊維強化プラスチック(CFRP)。軽くて加工性に優れたプラスチック(エポキシ樹脂)と、高い強度と剛性を誇る炭素繊維を組み合わせた新素材だ。その優れた特徴から、航空機や自動車などの大型輸送機を軽量化し、燃費を大幅に改善できる材料として、注目が集まっている。

しかし、唯一の弱点ともいえるのがリサイクルできないこと。高強度なゆえに修理が難しく、一部が損傷しただけで廃棄せざるを得ない。また、熱に強いため、焼却には莫大なエネルギーと時間を要することから、大部分が埋め立てで処理されているのだ。

環境汚染に直結しかねないCFRPの廃棄問題。その解決の糸口を見出したのが、NIMSの内藤研究員だ。CFRPを簡単に分解し、リサイクルできる方法はないか——? 内藤が目を付けたのは、なんと生体内での解毒に用いる「グルタチオン」。グルタチオンはヒトの体内でSS結合の酸化還元反応に関与しているが、この仕組みを、同じSS結合を持つエポキシ樹脂に応用しようと考えたのだ。

グルタチオンの写真
天然由来のペプチド「グルタチオン」。生体内で毒物を解毒する際に使われるが、その反応を模倣することで、CFRPの分解に成功した。
CFRPを分解中の写真

CFRPをグルタチオン水溶液に浸し(左)、攪拌するだけで分解できる(右)。室温で行え、人体にも無害な安全で環境に優しいリサイクル方法だ。

実際に、グルタチオンの水溶液にCFRPを浸し、3時間ほど撹拌してみると——見事、エポキシ樹脂が水溶液中に溶けだし、炭素繊維だけを取り出すことに成功した。溶け出したエポキシ樹脂も回収して再利用が可能なため、炭素繊維と組み合わせれば何度でもCFRPを作り出すことができる。

さらに、分解に使うグルタチオンは天然由来なので、環境にも負荷がない。「工業的な材料にバイオの視点を加えたことで、人にも地球にも優しい技術を考案できた」と内藤。分野の枠を超えた先で見つけた、まさに理想的なリサイクルシステムだ。
エポキシ樹脂以外の樹脂・複合材料にも適用が見込まれるこの技術。プラスチックのサーキュラーエコノミーを確立する決め手となるか——内藤の挑戦に注目だ。

内藤研究員の顔写真
「サーキュラーエコノミーやカーボンニュートラルなど、高分子材料を取り巻く課題は山積みです。新規材料の開発のみならず、材料科学からの社会貢献も果たして行きたいです」(内藤昌信研究員)。
BOOK
どっぷり浸かるサイエンスの世界
オトナ科学本
\今月はコチラ!/
本の表紙写真「ゼロからトースターを作ってみた結果」
「ゼロからトースターを作ってみた結果」
トーマス・トウェイツ 著/村井 理子 訳  
新潮社
メディア担当・Nのイチオシ!

タイトル通り、”本当に”ゼロから、つまり、原料からトースターを作ってみた、というドキュメンタリーです。トースターに使われている鋼鉄を手に入れるため、鉱山に行って鉄鉱石を採掘し、自前の溶鉱炉で溶かして鉄を得る、というように、すべての材料を原料から作るべく著者がひとり奮闘します。体を張った超危険なことから法に触れる(一線を越えた?!)ことまで、とにかくハプニングの連続で、突拍子もない計画にただただ笑い、そして本当に完成するのかドキドキしながら読み進めました。でも次第に、この大量消費社会がいかにブラックボックス化した技術で造られているのか、そしていかにエネルギーを使って成り立っているのかが見えてくるんです。ペットボトル一つとってみても、石油を掘るところから始まって、莫大なエネルギーとそれに携わる人々のおかげで、手元に届いている。物の価値とは何なのか。簡単に捨ててしまっている今の社会について、改めて考えさせられましたね。
さあ、果たしてトースターは完成したのか、そしてパンは焼けたのか——? それは読んでからのお楽しみ!

あらすじ

2016年イグノーベル賞を受賞した著者による、痛快なブログ本。トースターを、鉄やプラスチックなどの原料から作ろうとする無謀な計画から、現代の消費社会をユルく考察。普段当たり前に手にしている様々なものに対して、見方が変わる一冊。

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