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物質・材料研究の『使える!メールマガジン』
vol.121
 
2022.1.12
ピラジナセン液晶の写真
今月の一枚
ピラジナセン液晶の和傘

年の初めを祝うように、次々と開いていく華やかな和傘——。実は人工的に作られた有機分子「ピラジナセン」の結晶を顕微鏡で捉えたものだ。和傘一つの大きさは約1000分の1mm。物質に反応した時に色が変わる性質を利用して、NIMSでは物質のわずかな量を色の変化で測るセンサーなどへの応用に向けて研究を行っている。

HOT TOPICS
NIMSの最新情報をお届け!
リチウム空気電池に使われた独自材料の写真
世界最高レベルのエネルギー密度&サイクル数!
500Wh/kg級リチウム空気電池を開発
プレスリリース 2021/12/15

軽くて容量が大きい“究極の二次電池”と評されるリチウム空気電池。世界中で開発競争が激化する中、NIMSは現行のリチウムイオン電池の重量エネルギー密度を大きく上回る500Wh/kg級リチウム空気電池を開発、室温での充放電反応を実現しました。エネルギー密度、サイクル数も世界トップレベル! ドローンや電気自動車、家庭用蓄電システムまで、幅広い応用に期待大!

NIMS NOW欠陥号の写真
欠陥が材料の魅力を引き出す!?
NIMS NOW最新号は“欠陥特集”

“欠陥”と聞くとマイナスのイメージ……ですが、欠陥があることで性能が良くなったり、新たな工夫が生まれたりするなど、欠陥によってサイエンスが発展しているとも言えるのです。材料を語るうえで、避けることができない欠陥の意外な素顔に迫ります!

動画「コピー機の仕組みが巧みすぎる!」のイメージ写真
コピー機の仕組みを徹底解明!
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次々と異なる図柄を正確に印刷できるコピー機。いかにも複雑な仕組みでできていそうですよね。でも実は、誰もが知っている単純な科学現象を、巧みに組み合わせていたってホント!? コピー機を分解して徹底解明します!

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Langmuir-Blodgett装置の写真 超高温・大面積ナノ薄膜装置(超高温LB膜製作装置)の
開発に成功

プレスリリース 2021/12/9

ナノテックジャパンのロゴ画像 令和3年度「秀でた利用成果」の発表について

プレスリリース 2021/12/20

CNT分子内トランジスタの模式図の写真 室温で量子輸送可能な2.8nmの
カーボンナノチューブトランジスタ

プレスリリース 2021/12/24

PRアワードグランプリの表彰式の写真 NIMSが「PRアワードグランプリ2021」の
グランプリを受賞

プレスリリース 2021/12/24

NIMS公式ウェブサイト
TREND
材料の潮流をつかめ!
今、この材料がアツい!
EC調光ガラスの写真
Vol.7
エレクトロクロミック調光ガラス
~スイッチひとつで遮光/透明が自由自在! EC材料を搭載した進化系窓ガラス~

一見、何の変哲もない窓ガラス。しかし、スイッチを入れると、ガラスの色がゆっくりと紫色に変わり、日差しが徐々に遮られていく。そしてスイッチを元に戻すと、今度はだんだんと透明度が高くなり、数分後には室内に自然な光が溢れた。

スイッチひとつで遮光/透明状態を自由に切り替えられるエレクトロクロミック(EC)調光ガラス。自然光を取り込む開放的な空間を特長とする近年の高層ビルや商業施設において、カーテンやブラインドを必要としない、“次世代の窓”として世界的に注目を集めている。

メタロ超分子ポリマーで作製したEC材料の写真
紫(左)と青(右)のメタロ超分子ポリマーで作製したEC材料。材料に含まれる金属元素を変えることで、様々な色を表現できる。

EC調光ガラスの技術の肝は、電気を流すと変色する特性を持つEC材料。このEC材料を、 透明な電極のついた2枚のガラス板で挟み、電極間に電気を流すことで色を変えることができる。ただ、従来のEC調光ガラスは消費電力や発色性などに課題があり、飛行機の窓などごく一部の使用に留まっている。また、EC材料の製膜には真空状態が不可欠で、その設備を賄うための莫大なコストも普及を阻む要因の一つだ。

葉っぱ型ソフトディスプレイの写真
2019年にEC材料とフレキシブル透明電極基板を用いて開発した葉っぱ型ソフトディスプレイ。電流を流すと本物の紅葉さながらに色変化を再現できる、芸術的な試みとして注目を集めた。

より高性能、かつ一般の窓にも使えるくらい低価格なEC調光ガラスはできないか——。そこで樋口研究員が開発したのがEC材料「メタロ超分子ポリマー」。既存材料に比べてわずかな電力で駆動し、発色性にも優れ、材料内の金属元素を変えることで青、緑、紫、黒など様々な色を作り出すことができる。また、製造コストを下げるため、塗布による簡便な製膜技術を確立。

企業と共同で材料の合成プロセスの一本化を進め、2020年6月にはメタロ超分子ポリマーの低価格化と安定供給に成功した。そして同年9月、本格的な実用化に向けて、NIMSのある茨城県つくば市内のオフィスビルに1,000枚以上の調光ガラスを設置し、実証実験をスタート。約一年の実験期間を経て、現在はガラスサイズの大型化や操作方法の改良、遮光の自動化など、利用者の要望に沿って更なる改良を進めている。

これらの研究が評価され、樋口は昨年「つくば奨励賞」および「いばらきイノベーションアワード優秀賞」の2冠に輝いた。「この日本発の材料と技術を、国内のみならず海外にも広めていきたい」と樋口。
国連が定めた「国際ガラス年」でもある今年、樋口の革新的なガラスは世界にどう飛躍していくのか——EC調光ガラスから目が離せない。

樋口研究員の写真
「受賞はグループのメンバーや製造に携わっていただいた多くの企業、つくば市や川崎市などの協力によって成し遂げられた成果。関係者の方々に改めて感謝するとともに、更なる高みを目指したい」と樋口昌芳研究員。
BOOK
どっぷり浸かるサイエンスの世界
オトナ科学本
\今月はコチラ!/
本の表紙写真「料理の科学」
「料理の科学 素朴な疑問に答えます」
ロバート・ウォルク 著/ハーパー保子 訳
楽工社
見学担当・Mのイチオシ!

料理がおいしく作れるようになるかな、と思って手に取ったのですが、実際は料理に関する様々な現象を分析した、まさしく科学本でした。でも、まったく堅苦しい本ではないんです。著者はピッツバーグ大学の名誉化学教授という偉い先生なんですが、すごくウィットに富んだ方のようで、自らのボケとツッコミの間に科学的なデータを絡めて書かれているので、くすっと笑いながら一気に読めちゃいます。 
副題通り、一般の方から寄せられた素朴な疑問に答える「なんでも相談室」のテイストで書かれています。中には、「真夏の歩道で目玉焼きが焼けるか?」とか「レモンから最大限の果汁を絞るには?」とか、素朴を通り越して、ちょっとおふざけ気味の質問もあるんですが、それに対して実験や考察を繰り返し、科学的な観点からひたすら真面目に結論を出してくれています。印象的だったのは「冷凍のミックスベジタブルを電子レンジにかけたら火花が出た。何が起こったのか?」という話。もうミステリーを読んでいるようでした!
レシピも少し載っていますが、基本的に料理本ではないので、読んでもレパートリーは増えません(笑)。でも、普段何気なくやっている、お湯を沸かす、解凍する、煮る、焼く——そのひとつひとつに、物理や化学が深く関係していることがわかります。きっと皆さんも、この情熱的で懐の深い先生に色々と質問したくなるはずです!

あらすじ

『ワシントン・ポスト』紙の連載コラムを元に出版されたベストセラーの邦訳。食材から調理法、キッチン家電まで料理に関する一般市民の素朴な疑問に、専門家の観点から真面目に、かつアメリカンジョーク満載で答えた一冊。

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