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物質・材料研究の『使える!メールマガジン』
vol.147
2024.7.10
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今月の一枚
サイアロン蛍光体のドット模様
ネオンサインのようなサイアロン蛍光体の光。NIMSで開発されたサイアロン蛍光体は、LEDの課題であった赤色発光を世界に先駆けて実現し、急速に普及していった。しかし、開発の余地はまだ大きい。求められる特性を持った蛍光体を探すため、写真のような蛍光体の選別装置で大まかに選別した後、「一粒ずつ」結晶構造や元素組成を解析する。この「単粒子診断法」で新たな蛍光体を30種類以上発見した。
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★NIMS NOW(Vol.23 No.1)SMART LAB. -研究の自動化はどこまで来たか-
★電子・光機能材料センター 次世代蛍光体グループ
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HOT TOPICS(NIMSの旬な情報)
 
今、この材料がアツい! Vol.18
「単分子物理リザバーコンピューティング」
 
U-35 ~ 材料研究の未来を拓く若者たち ~
『File 6:岡田和歩』
 
HOT TOPICS
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DxMT人材育成セミナー
「適応的実験計画法とその停止規準について」開催
日野英逸 統計数理研究所 教授

日野 英逸
統計数理研究所 教授

7月11日、NIMSは「DxMT人材育成セミナー:適応的実験計画法とその停止規準について」を開催します。
 新材料開発には多くの試行錯誤が必要です。通常、研究者は実験データに基づいて材料の特性を評価し、次の試作品を設計するための仮説を立てますが、試作品の設計には多くの変数があります。しかも、仮説が正しいとは限らないため、可能な限り少ない試行で最適な材料を設計することが望まれます。
本セミナーでは、こうした状況で用いられるベイズ最適化(BO)能動学習(AL)レベルセット推定といった適応的実験計画法の方法論とそれらの停止規準を紹介します。

日時:2024年7月11日(木) 14:00-15:30
講師:日野 英逸
形式:オンライン(Zoom)
対象:機械学習の入門及び中級レベルの知識を持つ方
参加申込:事前登録はこちら

詳細はこちらからご確認ください。
 
つくばちびっ子博士2024
デジタルワールドで動画公開!
「つくばちびっ子博士」は、つくば市とつくば市教育委員会が主催する、全国の小中学生を対象とした科学体験プログラムです。参加者の小中学生は、つくば市内の研究機関等の現地訪問や動画視聴を通して確認クイズに挑戦し「つくばちびっ子博士」を目指します。 NIMSは、今年も「つくばちびっ子博士」に動画で参加します。見に来てね!
NIMSは、ノートPCやスマートフォンを利用した「つくばちびっ子博士2024 デジタルワールド」にて、おすすめ動画を公開します。硬くて強い材料を研究する研究者が、沖縄に生息する「ヤシガニ」に注目する理由とは?! 約6分間の動画を見た後に、確認クイズに正解すると「デジタルバッジ」がもらえます。この夏、デジタル空間でNIMSの研究に触れてみてください!

開催期間:7月20日(日) - 9月1日(日)
対象:全国の小中学生
参加機関:つくば市内の研究機関等
参加方法:「つくばちびっ子博士2024デジタルワールド」にログインした後、クイズ対象の動画ページで動画を見て、そのあとクイズページから動画にちなんだクイズを解きます。施設一覧から、理科(物理)で絞り込むと、NIMSを見つけることができます。

詳細は主催者のサイトをご覧ください。
つくばちびっ子博士2024
つくばちびっ子博士2024 デジタルワールド
 
....and more!
 
プレスリリース中の図 可視光から近赤外まで発光が様々に変色するマイクロビーズ
プレスリリース 2024/06/13
 
 
NIMS公式ウェブサイト
 
TREND
材料の潮流をつかめ!
今、この材料がアツい!
写真:酸化タングステンナノロッドに銀ナノ粒子とpMBA(パラメルカプト安息香酸)が吸着している。このpMBAは単分子にもかかわらずAI情報処理を行うことができる。
Vol.18
単分子物理リザバーコンピューティング
分子1つでAIの演算処理を実現!
 
一見、ペン先の拡大図のように見える写真だが、注目してほしいのは先端から伸びる細い針のような部分。これは酸化タングステンのナノロッド。このナノロッドには銀ナノ粒子が吸着しており、そして銀ナノ粒子とナノロッドの境目にはpMBA(パラメルカプト安息香酸)が吸着している。なんとこのpMBAは、単分子で人工知能の演算処理を実行することが可能なのだ。
通常、人工知能の演算処理にはニューラルネットワークが広く用いられる。ニューラルネットワークは、脳の神経細胞の回路網を模倣したAIモデルで、「入力層」、「中間層」、「出力層」から構成される。入力層で受け取ったデータを中間層でデータ処理し、出力層が結果を生成する。近年よく聞く、ディープラーニング(深層学習)では、多層の中間層を持たせたモデルを使って複雑なデータ構造を解析することが可能になった。 酸化タングステンナノロッドの拡大写真。ナノロッドに銀ナノ粒子が付着している。
酸化タングステンナノロッドに吸着する銀ナノ粒子。その境目にはpMBAが吸着している。
しかし、ディープラーニングにはひとつの問題がある。それは、消費電力が大きいこと。大規模なニューラルネットワークは演算処理に膨大な電力が必要なのだ。そこで演算を行う中間層の役割を、物理的な材料に担わせてしまおうというのが“物理リザバーコンピューティング”だ。入力された情報は、材料で情報処理が行われ、最終的に出力として吐き出される。これまで、さまざまな物理リザバーコンピューティングが考案されてきたが、単分子による演算処理を実現したのはNIMSが世界初となる。
西岡大貴 ICYS リサーチフェロー
西岡大貴 ICYS リサーチフェロー。「pHセンサーとして利用されていた単分子ラマンの仕組みを物理リザバーコンピューティングに応用してみようと考えました」
この“単分子物理リザバーコンピューティング”を実現したのは、西岡大貴 ICYS リサーチフェロー。「単分子を情報処理に利用するには、単分子が持つ情報にアクセスする必要があると考えました。そのために、表面増強ラマン散乱と呼ばれる手法を採用しました。この方法では、酸化タングステンのナノロッドに銀ナノ粒子を吸着させ、ロッドとナノ粒子のエッジに形成される増強サイトと呼ばれる領域に位置する、ごく少数のpMBA分子の振動ダイナミクスを高精度で捉えることができます。そして、電解質に浸したナノロッドに情報を電気信号として入力すると、その電圧の変化に伴ってpMBAに吸着するプロトンの量が変化するためpMBA分子の振動の様子が変化します。この様子をラマンで計測することで、分子からの演算結果を受け取るという仕組みです」
では、単分子物理リザバーコンピューティングで何ができるのか。西岡は「AIとして利用できるのでさまざまな応用が可能です。私たちのチームでは、小児糖尿病患者の血糖値変化を高い精度で予測させることに成功しています。この実験において2024年の段階で世界最高性能を達成しました」と語る。 実際の血糖値と物理リザバーコンピューティングを使った予測値のグラフ
左: 実際の血糖値変化(青)と単分子物理リザバーコンピューティングで予測した血糖値変化(赤)。
右: 実測値と予測値のずれを表したグラフ。既存の研究成果に比べ、予測値が正確であることがわかる。単分子の場合黄色、4分子では赤の結果となった。
実験室で測定を行う西岡 ICYS リサーチフェローと、同研究グループの新ヶ谷主任研究員。
実験室で測定を行う西岡 ICYS リサーチフェローと、同研究グループの新ヶ谷主任研究員。
「材料が持っているマテリアル知能の最小の形はなんだろうと考えた時に、それは少なくとも単分子だと思いました。超省電力で高性能なAIを実現できれば世界的な課題を解決できます。自分の見出した極小のサイエンスが大きな課題を解決するきっかけになれば嬉しいですね」
西岡が見つけ出した「分子に秘められていた知能」が情報処理の常識を変えるかもしれない。
もっと知りたい!
アツい単分子物理リザバーコンピューティングの世界

★プレスリリース(2024.02.29)
たった数個の有機分子が情報を記憶・計算して血糖値変化を高精度予測

★NIMS MANA ニューロモルフィックデバイスグループ
グループ HP

RISING STAR
材料研究の“期待の星”
岡田和歩研究員の写真
 
私は、鉄鋼材料の耐破壊特性を向上させる研究をしています。
鉄鋼は、自動車部品や建築資材など、さまざまな用途で使われる構造材料として知られています。鉄鋼の研究開発と聞くとひたすら「高強度・高延性化」のイメージが強いかもしれませんが、実際は……
\続きは特設サイト「材料のチカラ」でお読みいただけます/
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※「U-35」では、博士の学位取得後8年未満の研究者を支援する「科学研究費助成事業(科研費)・若手研究」の応募資格者(おおよそ35歳以下)を対象に、NIMSで活躍する研究者やエンジニア、その研究を支える事務職員をご紹介します。

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