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研究支援実績

 

利用実施例 -蛍光寿命測定-

蛍光ならびにFRETについて

FRETとはFluorescence Resonance Energy Transferの頭文字をとった略称で蛍光を発する分子同士の間でエネルギーのやり取りが起こる現象のことです。励起光で励起された蛍光分子が蛍光を発する替りに他の蛍光分子にエネルギーを渡し、エネルギーを受け取った方の分子から蛍光が発せられる、ということが起こることがあります。

蛍光、励起光とは??

 分子(物質)に光があたったとき、その分子(物質)が光を吸収する場合があります。これはその光の持つエネルギーと、分子をつくっている原子上の電子の持っているエネルギーがちょうどよい関係にあった場合に光が電子のエネルギーとして分子に取り込まれるということが起こるのです。「色」のある「もの」ではこの光が分子に取り込まれる、ということが起こっています。特定の波長(つまり特定の色)の光が「もの」に吸収され、残った光が色として見えています。たいていの場合には取り込んだ光のエネルギーは熱などになって流出していきますが、分子(物質)の中には取り込んだ光のエネルギーをまた光として放出するものもあります。この取り込んだ光のエネルギーを再び光として出す性質をもつ分子(物質)のことを蛍光分子(蛍光物質)と呼び、出てくる光のことを蛍光、と呼びます。また、最初に蛍光分子(蛍光物質)に取り込まれる光のことを励起光という名前で呼びます。

励起光と蛍光の間には蛍光の波長の方が励起光の波長よりも長い、という関係があります。光の波長は光の持つエネルギーの大きさと同じ意味で波長の短い光ほどエネルギーが大きい光です。蛍光は励起光が一度分子に取り込まれ、分子を構成している電子がエネルギーの高い状態(励起状態)となり、その高いエネルギー状態から元の低いエネルギー状態(基底状態)に戻るときに出てくる光です。その際に蛍光の方が励起光よりもエネルギーが少なくなっています。それで波長が長いのです。

また、蛍光物質が光を受けて電子が励起され、そこから蛍光を出して基底状態に戻るまでにはある時間がかかります。蛍光を観察する際はたいていの場合非常に数多くの分子の蛍光を観察します。この場合、励起光を当ててからの時間に対して観察された蛍光の強度をグラフ化すると図のようになります。励起してからの時間経過とともに蛍光量は減少していきます。何故かというとひとつひとつの分子は励起後、適当な時間をおいて蛍光を発しているからです。この時間の平均値を蛍光寿命と呼びます。この蛍光寿命は蛍光物質により、またその物質が置かれている状態により変化します。

FRETに戻りますと、FRETが起こるためには2つの蛍光分子が必要ですが片方の蛍光分子からの蛍光がもう片方の蛍光分子の励起光になれるような波長であることが必要です。

さらに、2つの蛍光分子間でFRETが起こる起こりやすさは2つの分子間の距離でも決まります。近いほど起こりやすくなり離れれば起こりにくくなります。だいたい1nmから10nmの範囲に近づいているときにFRETが可能になるといわれています。最後に距離だけでなくお互いの分子の位置関係も重要です。以上の条件がうまく整った時にFRETという現象が観察されます。

そして、FRETが起こっている場合には1つめの蛍光分子(ドナーと呼びます。)からの蛍光はFRETが起こっていない場合に対して減少します。蛍光となるべきエネルギーの多くが2つめの蛍光分子(アクセプターと呼びます。)に吸収されるからです。また、このドナー分子からの蛍光についてはFRETが起こっている場合にはそうでない場合に比べて蛍光寿命が短くなる、という現象が知られています。

このFRET現象をうまく応用すると、特定の組み合わせのタンパク質がお互いに結合しているかいないかを知ることができます。



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