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研究内容

半導体はその登場から100年も経過していないにもかかわらず、既に私たちの生活に欠かせないものとなっています。 これは半導体が情報・光・エネルギーを司る極めて汎用性の高い技術であるためです。 これまで半導体の主役はシリコン(Si)が担ってきましたが、スマートフォンやパソコンの頭脳である論理回路を構成するMOSトランジスタは、 従来の平面型からフィン型(FinFET)、さらにはナノシートを積層した3次元構造(GAA)へと進化しています。 ナノシートは薄いほど短チャネル効果を抑制できますが、Siシートでは厚さが4 nm以下になると、微細な厚みの不均一性によってキャリア移動度が著しく劣化する課題があります。 そのため、3 nm以下の厚さで高キャリア移動度をもつナノシートが求められており、原子レベルで平坦な2次元材料(例:遷移金属ダイカルコゲナイド MoS2やWSe2など) が期待されています。Siに代わる新たなナノシート材料と、そのデバイスプロセスの構築は極めて重要な課題です。

また、電力の変換・制御を行うパワーエレクトロニクス分野では、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)など、ワイドバンドギャップ半導体による革新が始まっています。 さらに次世代の酸化ガリウムやダイヤモンドにも注目が集まっています。 当グループでは、シリコン半導体で培われたプロセス技術やデバイス物理をベースに、新材料の物性を活かした革新的デバイスの創出を目指し、主に以下の3つの研究テーマに取り組んでいます。



新材料CFET製造技術

これまで平面に並べていたpチャネルトランジスタとnチャネルトランジスタを上下に積層し、集積度を飛躍的に向上させる「CFET」。 2030年代前半の量産化に向け、世界中で活発な研究開発が行われています。 しかし、CFET量産化から間もない2030年代中頃から後半にかけて、チャネル材料が2次元材料へ移行する可能性を見据えると、 今から新材料の導入を見据えたCFET製造技術の研究開発を行う必要があります。
私たちは、JST次世代エッジAI半導体研究開発事業(テーマ③次世代トランジスタ技術)に参画し、 NIMSにおける「新材料CFET製造基盤」の構築に邁進しています。

ゲルマニウムナノシートおよびゲルマネン(Germanene)

1947年に世界で初めて実証されたトランジスタには、ゲルマニウム(Ge)が使われていました(1956年ノーベル物理学賞)。 Geは炭素(C)やシリコン(Si)と同じⅣ族であり、Siよりも電子・正孔ともに移動度が高い優れた半導体材料です。 しかし、製造プロセスに敏感で特性制御が困難だったため、主役の座をSiに譲る形となりました。 近年、前述のようにSiナノシートの薄膜化が限界に近づく中、Geナノシートの薄層化によりGeが再び注目されています。 GeはSiよりも極めて移動度が高く、厚さ2nmのGe(111)ナノシートはSiナノシートの10倍の移動度を持つと予測されています。 しかし、Geナノシートは作製が極めて困難であり、予測された高移動度は未だ実験的に確認されていません。 これは、単結晶Geを薄膜化する際の結晶ダメージや、アイランド形成を伴うStranski-Krastanov (S-K) 成長により、平坦な形成が困難であるためです。 一方、2010年にノーベル物理学賞を受賞したグラフェンは、ハチの巣格子状(ハニカム状)に炭素原子が並んだ2次元物質です。 このハニカム構造をGe原子で再現した「Germanene(ゲルマネン)」も実験的に確認されていますが、現状では金属基板上でしか合成できず、 さらに容易に酸化してしまうため電子物性評価が進んでいません。
私たちは、これらGeナノシートおよびゲルマネンの「新しい形成手法の開拓」に挑戦しています。

SiCパワーデバイスの重要課題:SiO2/SiC界面

炭化ケイ素(SiC)パワーデバイスは、鉄道車両や自動車(EV)への搭載が進むなど、急速に身近な技術となっています。 低消費電力化の鍵を握るインバータの構成要素「SiC MOSトランジスタ」ですが、オン時の電流の通路となるSiO2/SiC界面特性が不十分なため、 本来の性能を完全に発揮できておらず、未だ改善の余地を多く残しています。
私たちは、SiO2/SiC界面特性の改善に向けて、新たな酸化方法をはじめとするプロセス構築、界面構造の物理分析、デ バイス試作、およびその電気特性・信頼性評価などを総合的に行っています。

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