Research
1.イオン・電子の時空間ダイナミクスを利用するニューロモルフィックデバイス
近年、機械学習の高消費電力・高通信量・高遅延の問題が深刻化している。これを解決するため、私たちはイオン伝導体界面・表面などの微小領域でのイオンや電子の時空間ダイナミクスを利用して人間の脳のように高効率に情報処理を行うニューロモルフィックデバイスを開発している。厚さ数ナノメートル程の電気二重層やたった数個の有機分子などを計算資源として用い幅広い用途に使用可能な高性能・高集積AI機器の創成を目指す。
Publications: Sci. Adv. (2024), Sci. Adv. (2022), Sci. Adv. (2018)

2.スピン波干渉を利用する超高速物理演算デバイス
磁性体内で起こる高速で微細なスピン波(磁気の波)を水紋のように干渉させると、複雑で多様な(カオス的な)出力応答が得られる。私たちは、この仕組みを脳型情報処理に応用して高精度の時系列パターン予測が可能であることを見出した。低消費電力かつGHz以上の高周波で動作する超高速物理演算デバイスの開発に向けた研究を進めている。
Publications: Mater. Today. Phys. (2024), Adv. Intell. Syst. (2023)

3.固体電解質界面における電気二重層・空間電荷層の解析
全固体電池は次世代電池の最有力候補であり、電気自動車をはじめ、幅広い応用が期待されている。 固体電解質/電極界面の高い界面抵抗に由来する出力低下が課題であり、その一因として界面近傍でのイオン濃度変化に起因する電気二重層・空間電荷層の影響が疑われるものの、詳細は不明である。私たちは半導体科学の手法である電界効果トランジスタの仕組みを応用して、固体電解質界面の空間電荷層の解析を行ない、全固体電池の高出力化への貢献を目指している。
Publications: Commun. Chem.(2021),
Mater. Today Phys. (2023), Mater. Today Adv. (2023)

4.電気二重層効果や酸化還元反応を用いる物性制御デバイス
イオン伝導体/電子材料界面では、イオン伝導体中の可動イオンが界面で蓄積・欠乏することで生じる電気二重層効果や電子材料へのイオン挿入・脱挿入による酸化還元反応などによって1021 cm-3を超える高密度電子キャリアを電子材料に注入し、バルク材料で得られない新しい電子物性を得たり、電子物性を大幅に変化させることができる。私たちは、こうしたイオン伝導体の界面機能を利用する物性制御デバイスの研究を行なっている。
Publications: Nano Lett. (2024), ACS Nano (2020)

5.マルチプローブAFMによるナノ材料電気特性の直接計測
新規ナノ材料の電気特性を明らかにしたいが、従来のリソグラフィ技術で電極を取り付けることが困難な場合がある。そのようなナノ材料の電気特性を解明するために4本のプローブを独立駆動可能なマルチプローブAFMを開発し、ナノスケールの位置精度での直接電気計測を可能にした。例えば、直径1nm程度の単一単層カーボンナノチューブの4探針計測が可能である。また、電気計測中のナノ材料のラマン分光測定が可能であり、構造、組成などに関する情報が得られる。
Publications: Jpn. J. Appl. Phys. (2016), Adv. Mater. (2012)

6.WOxナノロッドのラマン散乱増強効果を用いた単分子センシング
生体細胞内、触媒表面、電極表面など極微量分子が重要な役割を果たすシステムが数多く存在する。そのようなシステムで各種分子の時空間的な挙動を把握するためのセンサー技術を開発した。結晶内に2次元導電面を有するWOxナノロッドにプラズモン共鳴による高いラマン散乱増強効果があることを見いだし、単分子の識別検出が可能となった。 さらにWOxナノロッドをAFMプローブ先端に取り付けることによって高空間分解能センシングの実現を目指す。
Publications: Nanoscale (2022)
