研究活動

電気化学ナノバイオテクノロジーグループ

電極材料と生きる「電気細菌」の理解とそれに基づく制御技術の開発
地球上のあらゆる生命は電子移動反応を利用することで維持され、活動しています。しかし、細胞内は絶縁性の脂質膜で包まれておりそのエネルギー状態を精緻に捉えることは困難です。近年、実は多くのバクテリアが、導電性ナノ粒子やレドックス小分子、膜酵素を電子キャリアーとして使い、細胞外にある鉱物との電子のやり取りをする多種多様な機構を有する「電気細菌」であることが明らかになってきました。当研究室では、この電気細菌の持つ仕組みを理解・模倣することで、細胞内へ効率的にアクセスする物質・技術を開発し、革新的な医療や環境・エネルギー技術の創成へ繋げることを目指しています。

電気細菌による細胞外電子移動機構の理解

電気細菌に対して電気化学分析をベースに、分光解析、及びゲノム、タンパク質、遺伝子発現などの生化学解析を組み合わせることで、電子移動機構を明らかにしてきました。例えば、鉄腐食細菌は、膜貫通型のシトクロム複合体や金属導電性の硫化鉄ナノ粒子を生合成し、それらを介して電極から電子を直接引き抜くことを証明しました。

ハイスループット測定システムを活用したデータ駆動型物質探索

独自に開発した電気化学測定系を用いることで、条件検討や再現性の評価が従来の100~1000倍の速度で可能になったりました。このようなハイスループット測定系で構築したデータ群にデータサイエンスを適応することで、微生物電流生成を促進・阻害する要因(印加電圧、レドックス分子濃度等)の特定や、電流生成を促進する可用性レドックス分子の探索を行っています。

電気細菌科学の応用例:微生物鉄腐食関連物質や材料の探索

電気細菌は、電極触媒として用いることで発電や物質合成といった恩恵をもたらす一方で環境中やヒト体内では、我々にとって有害な反応を媒介しています。例えば、鉄腐食細菌は、鉄から電子を直接引き抜くことで、嫌気環境で起きる鉄腐食反応を大幅に加速させ、莫大な経済損失と安全事故を引き起こしています。鉄腐食細菌の電子引き抜き機構を理解・制御することは、嫌気鉄腐食を遅らせる材料開発や腐食センサーの開発へとつながります。他にも種々の病原細菌における電気細菌としての性質が我々の研究から明らかになっており、細菌活性を電気によって検出・抑制する技術開発へと展開しています。
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