スピン・パイエルス系からの超伝導
高温超伝導体の母物質は反強磁性体です。少量のホールドープで反強磁性は消失し、スピン一重項のスピン液体状態と呼ばれる状態になります。最近、相図上のこの付近でストライプ状の電荷パターンが観測されたり、走査トンネル顕微鏡で空間的な不均一が確認されるなど、自明でない空間構造が何らかの役割を果たしていることを示唆する実験が数多く報告されています。 このような構造とそこでのスピン励起は、超伝導の発現とどのように関係しているのでしょうか。私達は、スピン一重項でかつ最も簡単な空間構造を持つ状態として、スピンパイエルス系を最初のターゲットにしてこの問題に取り組んでいます。 実際、ごく最近La1.850Sr0.15CuO4とYBa2Cu306.95 で、スピンパイエルス状態と超伝導の共存を示す光学フォノン分散の実験も報告されています。 最初のステップとして、私達は、ボゾン化法と呼ばれる1次元の強相関電子系に対するテクニックを改良して、スピン自由度の方向揺らぎを全面的に取り込めるような方法を構築しました。そしてこれを利用して、擬一次元のスピンパイエルス系において、スピン、電荷両自由度の位相の量子力学的な干渉効果で超伝導性が特定の条件下で発現することを理論的に見出しました(図1)。今後、更に2次元系(図2)へと研究を広げていく予定です。 |
![]() 図1 : 擬1次元系 ![]() 図2 : 2次元系 |