耐食鋼の開発
NIMS研究者
西村 俊弥
参画研究者
 
研究開発の目的

 鉄筋コンクリートの劣化では、鉄筋が腐食して鉄さびの体積膨張でコンクリートに亀裂生じる。従って、耐食性の高い鉄筋が求められているが、ステンレス鉄筋では著しく高価であり、塗装鉄筋では施工で問題が生じている。安価で高耐食性の鉄筋を創製し、橋梁への適用化技術の確立を達成する。

研究開発の内容
(1)高耐食性鉄筋の創製

1)コンクリート内部環境を独自に開発したセンサーで求め、その結果を用いた模擬溶液中で低合金鋼の電気化学特性を求めることで迅速に耐食指針を得た。

2)純金属を用いずに、安価な鉄含有合金およびスクラップ鉄のみで創製して製造コストを著しく低減することに成功した。


(2)耐食鋼の革新的な耐食性

1)環境がマイルド:表面が金属状態(ステンレス同様)

2)環境が厳しい:さびが局部腐食を止める


(3)高耐食性の実証

 沖縄県宮古島での暴露試験で実証済。


(4)耐食鋼異型鉄筋の優れた機械的特性


(5)接合技術確立

 溶接および圧接により炭素鋼と接合が可能であり、接合部に欠陥を生じない。



(5)製造技術の確立


(6)橋梁への応用技術確立:コンクリート構造体評価(継続中)

研究開発された技術・成果(まとめ)

・安価で高耐食性を示す鉄筋を開発した。さらに、JIS規格を満たす機械的特性を付与することが可能である。

・低品位(安い)原料のみで創製を可能とし、炭素鋼鉄筋の3倍程度のコストで作成可能である(ステンレス:10倍、塗装鉄筋:3倍)。

・溶接や圧接により炭素鋼鉄筋と接合が可能であり、劣化橋梁の補修用としても利用できる。

実用化イメージ

・開発鋼の高耐食性は、暴露試験で実証済みである。

・異型鉄筋の量産化技術では、耐食鉄筋の炭素量が0.1%までは、圧延ままで製造可能であり、0.1%以上では熱処理を施すことでJIS規格を満たす。

・橋梁への具体的な適用を目指し、鉄筋メーカーや建設会社と連携して実用化技術を構築している。

未来への展望

 開発鋼は、鉄筋用途ばかりでなく、板材として耐候性鋼や農業用耐食鋼(矢板等)として展開可能である。