電磁波による鉄筋腐食程度の非破壊検出
NIMS研究者
何 東風
参画研究者
志波 光晴、高谷 哲、堤 直人
研究開発の目的

 コンクリート中の鉄筋の腐食はコンクリートにひび割れを生じさせるとともに構造物の強度を低下させるため、様々なコンクリート構造物の鉄筋腐食を非破壊的に検出する方法が求められている。超音波を用いた手法では骨材がノイズを発生するために鉄筋腐食を検出するのは困難である。またX線を用いた方法では高架橋などの現場での適用は難しい。本研究では電磁波を利用して小型の装置とノートPCで鉄筋の腐食程度を判別するとともにかぶりや鉄筋の直径を測定する手法を開発した。

研究開発の内容
・鉄筋径とかぶりの測定

 電磁波の励起コイル(70 mmφ)と検出コイル(10 mmφ)からなるスキャナーで鉄筋コンクリートの表面をスキャンし、かぶりと鉄筋径を同時に測定することができる。70 mmまでのかぶりを検出可能である。この時用いる励起波の周波数は4 kHzである。



・鉄筋の腐食程度の判別

 鉄筋の腐食程度を判別する非破壊電磁波手法を開発した。鉄筋上にできる腐食生成物は鉄筋とは異なる電気伝導度や透磁率を有するため、励起コイルからでる80 kHzのAC波に対する電磁応答を検出コイルで検出することで腐食程度の判別が可能であることがわかった。ロックインアンプで得られる励起波と同位相のXシグナルと90度位相の異なるYシグナルを解析する事で鉄筋腐食程度を判別する。測定システムは下図に示した様に励起コイルと検出コイル、ロックインアンプからなるスキャナーとノートPCかなり、スキャナーの電源もノートPCのUSBポートから得るのみなので非常に小型である。


研究開発された技術・成果(まとめ)

・4 kHzの電磁波を利用して鉄筋コンクリート構造物におけるかぶりや鉄筋の直径を測定する手法を開発した。

・80 kHzの電磁波を利用して鉄筋の腐食程度を判別する手法を開発した。励起コイルが30 mmφの場合、検出可能なかぶりは60 mmである。

実用化イメージ

・京都大学、企業との共同で鉄道橋、電柱などでの現場実証試験を実施し、計測装置メーカーによるプロトタイプを作成する。

・作成したプロトタイプを様々な企業に貸与して様々な現場での試験データを蓄積するとともに、実際の維持管理への適用法を検討し、製品化につなげる。

未来への展望

 厚いかぶりなど、様々な条件に適用可能な様にセンサーの改良を行い、鉄道橋、道路橋、など幅広いインフラ構造物の維持管理の効率化に貢献する手法へと育て上げる。