腐食機構解明のための加速試験開発
NIMS研究者
廣本 祥子、土井 康太郎
参画研究者
秋山 英二(東北大)
研究開発の目的

 ・実環境では数十年以上かかるコンクリート中鉄筋腐食を簡便かつ迅速に再現できる新腐食加速試験法の開発。

・開発した試験法により多様な実環境を再現し、環境毎の鉄筋の腐食メカニズムを系統的に理解することを目指す。

・コンクリート構造物の劣化進行度合いの推測や補修材の選択、新しいコンクリートや鉄筋の評価試験に応用可能。

研究開発の内容

研究開発された技術・成果(まとめ)

・開発した高酸素腐食促進試験法により、高圧酸素ガスを用いてコンクリート中の鉄表面におけるカソード反応を促進し、鉄の腐食(さび形成)を酸素圧に比例して促進できた。

・高酸素腐食促進試験で形成されたさびの組成は実環境のさびと同様であり、従来法の課題である腐食加速とさび組成の再現を両立できた。

・高圧酸素ガス暴露前にアノード分極等で不働態皮膜を破壊しておくと、高酸素圧下でも腐食進行が加速できる。

・実構造物と同程度の厚さのかぶりの試験体にも、高酸素腐食促進試験は適用可能である。

・コンクリート内での鉄筋の腐食発生、進展過程を捉えることができ、腐食メカニズム解明が可能となった。

実用化イメージ

・高酸素腐食促進試験に関する成果は、土木学会、腐食防食学会などの学協会で発表し、本試験方法の周知を行っている。規格化に必要なデータや手順について情報収集し、規格化を目指す。

・酸素圧と腐食加速の程度に関する基礎データは蓄積しつつあり、高酸素腐食促進試験法はかぶりや鉄筋、補修材の材料間の耐食性比較に適用できる段階と考える。使用圧力約0.5 MPaの加圧容器が市販されていることから、コンクリートや補修材のメーカー、鉄筋メーカーの技術者による、大気開放下の約25倍の腐食加速験が可能である。酸素ガス圧1 MPa未満であれば、試験に際して特段の資格を要しない。

未来への展望

・あらゆるコンクリート環境(中性化、凍害、乾湿繰返しなどを含む)における鉄筋腐食メカニズムの解明。

・新開発された補修材や鉄筋、骨材を用いたコンクリートの腐食評価への応用。

・解明した環境と腐食メカニズムの関係を用いた、実環境におけるコンクリート構造物の寿命予測。