津崎副センター長がCBCラジオに生出演しました


津崎副センター長が、8月29日(木)にCBCラジオ(中部日本放送梶j「多田しげおの気分爽快」の朝からP・O・Nに出演しました。


超鉄鋼、まもなく実用化

副センター長 津崎 兼彰

TM.IN〜BG

神尾アナ : 前枠

多田アナ :

私たちの身の回り、どこにでもある材料「鉄」。その歴史は4千年にもなるということですが、当たり前に存在することから、これまであまり注目されてこなかったそうです。ところが最近、その鉄を一層固くする新しい技術が開発されて、一気に関心が集まっているそうです。

一体どんな技術なのか?、この技術を開発している独立行政法人 物質・材料研究機構 超鉄鋼研究センターの副センター長でいらっしゃいます津ア 兼彰(つざき かねあき)さんに伺います。

 ■そもそも、どうして鉄は固くなるのか?

実は、まじりけのない鉄は、あまり固くない。固さの度合をイメージでいうと、細目の針金程度の固さしかない。

鉄を固くするための一般的な方法は、混ぜ物をしてやること(=合金)。例えば炭素を混ぜてやると固くなる。この良い例が日本刀。刀匠の熟練した技によって、混ぜてやる炭素の量を調節し、思い通りの固さを作り上げている。

他にも、ニッケルやクロムを混ぜ合わせることによって、ステンレスになったりする。

 ■鉄を固くする新しい方法は?

新しい方法は、混ぜ物をしないで固くする方法。

普通の鉄を顕微鏡のレベルで見てみると、鉄の結晶の大きさは直径十数ミクロン(1ミクロン=千分の1ミリ)だが、新しい鉄は、その大きさを10分の1まで小さくしてやることによってできる。新しい鉄=超鉄鋼の性能は、これまでの鉄に比べて強度が2倍、寿命も2倍となる。

超鉄鋼の作り方は、加工する際の温度、圧力の強さや加える方向を調節してやることによってできる。

注)鉄は分子状態がありません。原子(Fe)があつまって鉄ができます。 

■新しい鉄=超鉄鋼によって、何ができる?

これまでと同じ構造で、高さ700メートルにもなる超超高層ビルを建設できる。また、脚(支柱)のない超大橋を作ることができる。自動車に使うと、同じ強さで重さを20%軽くすることができる。

■超鉄鋼のメリットは?

最も大きなメリットは、環境に配慮した鉄の製造ができること。現在、日本では毎年1億トンの鉄が作られている。このうちの7千万トンは輸入した鉄鉱石をもとに作られ、残りの3千万トンがスクラップからリサイクルされている。高度成長期に建設したビルや橋の寿命が近づいていて、後20年もすると、リサイクルのみで日本の鉄の需要がまかなえるようになる。

その際、リサイクルに余分な手間や余分なエネルギーがかかる混ぜ物をした合金よりも、混ぜ物のない超鉄鋼の方が再加工しやすく、より一層環境に配慮したものとなる。しかも、強度が倍になると今までの半分の量ですむことになる。これを地球規模で考えると、莫大なエネルギーの節約ができることになる。

補足:

==科学技術館 展示室Iron worldのホームページの序文から==

鉄は私たちのくらしに欠かせない重要な素材です。しかし、あまりにも身近にありすぎて、鉄の本当のすばらしさは意外と知られていません。
 地球の総重量の約30%を占める鉄。そんな鉄と人類との出会いは6千年も昔であるといわれています。現代文明を築き支えてきた鉄鋼は、地球の環境を守る技術や、新しい鉄利用の開発で、未来を大きく開こうとしています。

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その他諸々情報(津崎のつぶやきも含めて):

○   地球の質量は6x1021トン!!これは60万トンの一億倍の一億倍!!

鉄はこの地球の30%をしめている。この資源を有効に使わない手はない。

○   日本で作られる色々な材料の総重量は約2億トン。このうちの半分が鉄で一番多い。次が35%のコンクリート。材料を作るにはエネルギーが必要。現代社会は大量の鉄で支えられている。なるべくエネルギーを消費しない鉄作り技術を生み出さないと、将来の持続的社会の実現は夢と化す。

○   全世界で年間作られている鉄は8億トン。昨年度の統計では、中国が1.5億トンで第一位、第二位日本で1億トン。経済成長めざましい中国が日本人一人あたりの鉄の年間使用量(約500キロ:乗用車の半分)と同じになるとすると、人口が13億人なので6億から7億トンもの鉄(新たに約5億トン)が必要になる。これによるエネルギー環境課題は人類にとって死活問題。

○   超鉄鋼は日本発信の技術。良い技術はすぐに世界も注目し、韓国、中国、EUで同じような国家プロジェクトがすでにスタートして追い上げが厳しい。我々は、日本独自の技術を完成させるためにも実用化を急いでいる。超鉄鋼は技術立国日本にとってとても大切な技術という思いで日々努力している。

○   実用化段階にはいると、アカデミックな研究や論文書きと全く違う、人間くさい問題もたくさん出てきます。本当の意味での産学官連携を実現するためには、官学の研究者の能力スペックが従来と変わらなければならない、と実感しています。

以上


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