超々臨界圧火力発電用超鉄鋼材料に関する日中シンポジウム開催報告


超々臨界圧(USC)火力発電用超鉄鋼材料に関する日中シンポジウム(Symposium on USC Steels for Fossil Power Plants 2005)が、平成17年4月12、13日に北京で開催されました。本国際シンポジウムは、超鉄鋼研究センターとMOUを締結している中国鋼鉄研究総院(Central Iron & Steel Research Institute, CISRI)とで共同企画し、開催されたもので、蒸気温度と圧力を高めた高効率の火力発電であるUSC発電プラント用の耐熱鋼及び耐熱合金について最新のデータを基に討論が行われました。参加者は、中国、日本を中心としてイタリア、米国、韓国からのあわせて約80名でした。

中国からは電力事情の現状とUSC発電への展望、USC発電用耐熱鋼の材料選択についての考え方、12Crフェライト系耐熱鋼の改良を目指した組織と機械的特性におよぼす添加元素の影響と溶接熱影響部の組織に関する基礎的検討、Ni基超合金の改良等に関して発表が行われました。日本からはNIMS超鉄鋼研究センターおよび材料基盤情報ステーションより8件講演し、NIMS開発9Cr耐熱鋼の成分設計思想及びクリープ強度向上メカニズム、BN介在物の制御、磁場中熱処理を活用したクリープ強度向上、700℃以上で適用可能な新耐熱鋼のクリープ強度と組織、長時間クリープ破断強度の低下とその予測精度の向上に関する報告を行いました。米国からは、Ni基超合金の強度と組織、イタリアからはUSC用耐熱鋼の強度と機械的特性、韓国からは高B添加10/12Cr鋼の組織と熱間加工性及び、クリープ強度におよぼすCuの影響についての報告があり、各講演とも質疑応答時間を大幅に超過しながら活発な議論が行われました。また、総合討論でもフェライト系およびオーステナイト系耐熱鋼のクリープ強化機構と組織や長時間クリープ強度などに関して細部にわたる議論が行われ、先行する日本、欧米の研究成果を貪欲に吸収しながら耐熱鋼の開発・実用化を強力に推進しようとする中国側の意気込みが伺えました。

中国においては経済発展に伴って増大する電力需要や豊富な石炭供給を背景にUSC発電に対する期待が高まっています。必要となる材料開発についてはCISRIが中心的役割を果たしていますが、耐熱鋼に関する研究はようやく緒に就いたばかりであり、合金設計に対する指導原理や長時間クリープデータとその解析に関してNIMSへの非常に大きな期待を感じました。

本シンポジウムの直前に北京で大きな反日デモが行われるなど中国における対日感情の悪化が懸念される中での開催となりましたが、本シンポジウムならびにCISRIとの研究討論は非常に活発かつ友好的な雰囲気で進められました。またBanquetでは中国式「乾杯」で何度もグラスを飲み干しながら大いに友好を深めました。今回の国際シンポジウムを礎に耐熱鋼分野においても当センターとCISRIの良好な協力関係に発展させ、国際協力・理解の一助になればと願う次第です。また、同じく火力発電プラントの蒸気条件高温化への動きが加速している韓国を含めて日中韓の連携を深め、USC発電プラント用耐熱鋼の研究開発および実用化を推進し、エネルギー・環境問題の観点から重要な課題となっている火力発電プラントの高効率化に貢献していきたいと考えています。

   

(耐熱グループ 仙波潤之、宗木政一)


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