高効率発電用材料に関するMPA-IfW-NIMSワークショップ参加報告


蒸気温度と圧力を高めた超々臨界圧(USC)火力発電を中心とした高効率の発電用材料に関するワークショップ(International Workshop on Performance and Requirements of Structural Materials for Modern High Efficient Power Plants)が、平成17967日にドイツ南西部、フランクフルトの約30km南に位置するダルムシュタットで開催されました。本ワークショップは超鉄鋼研究センターおよび材料基盤情報ステーションがシュツットガルト大学材料試験研究所(MPA Stuttgart)ならびにダルムシュタット工科大学材料試験所(IfW Darmstadt)と締結している研究協力に関する覚書に基づくもので今回が5回目となります。

大幅な発電効率向上を可能とする蒸気温度650700℃超級USC発電プラント実現のために必要となる高強度高温構造部材に関して、高Cr耐熱鋼を中心にオーステナイト耐熱鋼・Ni基耐熱合金を含め、その材料特性とニーズを焦点に議論が行われました。発表は欧州から10件(内、MPAおよびIfWから6件)、日本から11件(内、NIMSから8件)の計21件、参加者はドイツを中心に欧州から約70名、日本からは14名の計80名強でした。

講演は@新耐熱鋼の開発・最適化・キャラクタリゼーション、Aボイラ構造体としての設計・挙動と損傷計測、B溶接部の破壊と長時間挙動およびクリープデータ評価、の3セッションで行われ、欧州からはCOST522プロジェクトを継承して2004年度から始まったCOST536プロジェクトにおける高Cr耐熱鋼開発の展望、既開発先進9Cr耐熱鋼の組織解析と組織変化のモデリング、高Cr耐熱鋼溶接継手のクリープ強度評価、IfWで実施しているクリープ破断データ評価とクリープ変形モデリング、高温構造物のクリープき裂進展評価などに関する発表が行われました。ま

た、日本からは国内における高Crおよびオーステナイト耐熱鋼・Ni基耐熱合金の開発状況、NIMS開発高ボロン9Cr耐熱鋼の組織とクリープ強度および溶接継手におけるTypeIV破壊抑制機構、既開発先進高Cr耐熱鋼の析出挙動と長時間組織安定性、大径溶接鋼管・溶接継手の実体内圧クリープ試験と余寿命評価などに関する発表があり、活発な議論が行われました。材料開発、長時間クリープデータとその解析に関しては日本のポテンシャルの高さを再認識しましたが、欧州では650700℃級USC実現に向けてCOSTThermieなど国家・欧州レベルのプロジェクトを推進しており、日本においてもその必要性を痛感致しました。また、研究面ではクリープや組織変化のモデリングに関する研究も活発に行われているのが印象的でした。
 

発表者とIfW DarmstadtProf. Berger (前列右端)

懇親会会場からの風景


(
耐熱グループ 仙波潤之)


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