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1st International Conference on Super-High Strength Steels参加報告1st International Conference on Super-High Strength Steels (SHSS 2005)が、平成17年11月2日から4日にかけて、イタリアの首都ローマ郊外のシェラトンローマホテル&会議場で開催されました。本国際会議は、Associaazione Italiana di Metallurgia(AIM)とCentro Sviluppo Materiali(CSM)の主催、Tenarisの協賛により行われました。座長はCSMのBuzzichelli材料研究部長が勤められました。環境、輸送、エネルギー問題に対応するために、高強度鋼、特に超高強度鋼のState-of–the-artと将来のあり方を、材料科学者、技術者、ユーザー間で正確に議論することが目的でした。 約30カ国から260人を超える参加者がありました。発表件数はおおよそ160件でした。参加者の内訳としては、参加者の多い順に、イタリア、ドイツ、フランス、イギリス、スウェーデンなどの欧州諸国が全体の約6割、日本、韓国、中国の東アジアからの参加者は1割強でした。ちなみに日本からの参加者は19人で、その内、NIMSからの基調講演は2件、一般講演は6件でした。また、研究分野と産業分野の参加者の割合はほぼ同じであり、講演件数の比率もこれと同程度とのことでした。とくに発電プラントや自動車業界などのユーザー側からの参加者が比較的に多かったのが印象的でした。 セッションは、Plenary、自動車関連、高温材料、金属構造材料、そして物理冶金&合金設計セッションの5つから構成されていました。Plenaryセッションでは、高強度鋼のガスパイプライン、石炭発電プラント、自動車用鋼板、そして土木建築構造物への利用に関する最新の話題が提供されるとともに、2004年3月からヨーロッパ鉄鋼業界が開始した“The European Steel Technology Platform”(ESTEP)の取り組みについて報告がありました。その後のパネルディスカッションでこれらのテーマに関する総括的な議論が行われました。引き続き行われた、自動車関連セッションでは、Dual phase鋼、TRIP鋼、ステンレス鋼板などの開発の現状とともに高強度鋼の成形性やスポット溶接性などに関する最新の研究報告があり、活発な議論がなされました。高温材料セッションでは、高Cr耐熱鋼を中心とした耐熱鋼のクリープ強度特性、高温酸化特性、溶接特性に加えて、耐熱鋼のボイラーや蒸気タービンへの応用などに関するサブセッションが設けられていました。金属構造材料セッションでは、高強度鋼構造材料の開発の現状や高強度鋼を用いた構造物の軽量化提案、そしてパイプラインへの応用に関する話題提供などがありました。物理冶金&合金設計セッションでは、結晶粒微細化、機械的特性、合金設計、モデリングや耐食のサブセッションが設定されていました。とくに結晶粒微細粒化セッションに日本、韓国、中国から多くの発表があり、本研究分野で東アジアが重要な役割を担っていることが感じ取れました。なかでも結晶粒微細化パラメーターの定量的な理解と結晶粒微細化技術の実機への応用、遅れ破壊に関する発表が注目を集めました。また、CSMが開発したストリップキャスト法が紹介されました。この製造法は、コンパクトかつ柔軟性が良いことから設備投資を大幅に減少でき、しかもIn-line 熱間・温間圧延および焼鈍が実現できることから、今後注目されるでしょう。 以上、材料研究者、技術者からだけでなくユーザーからの話題提供もあり、高強度鋼研究についての活発な討論の場が得られました。すなわち、「使われてこそ材料」が欧州でも強く実感できました。 最後に、本国際会議の開催に多大な御尽力を頂いたCSMのBuzzichelli材料研究部長をはじめとするスタッフの皆様に深く感謝申し上げます。なお、次回の国際会議の開催日程については現時点では未定とのことでした。
会場入り口付近での一風景 (金相グループ 木村勇次、冶金グループ 邱 海) |
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