第7回高窒素鋼国際会議(HNS2004)参加報告


  第7回高窒素鋼国際会議(HNS2004)が、2004年9月19-22日にベルギーのオーステンドで開催されました。オーステンドはブリュッセルから北西に100kmほど離れた北海に面した砂浜のきれいなリゾート地で、会場となったホテルは昔の宮殿を改造したもので大変印象的でした。この国際会議は1988年に第1回が開催されて以来、これまで欧州を中心にインドや日本(京都)でも開催されてきました。今回の参加者は21カ国から約100名で、比較的小じんまりとした会議でしたが、よく企画され、大変充実したものでした。日本からの出席者は、濱野修次(大同特殊鋼)、菊地靖志(大阪大学)、宮野泰征(産総研)、三浦春松、小川英典(産技短大)、高木節雄、土山聡宏(九大)、片田康行(NIMS)の8名でした。

  ところで、長年、一連の会議の運営委員の中心メンバーとして活躍してきたMr. G. Stein とProf. Alan Hendry がまだ働き盛りの最中、今年相次いで鬼籍に入りました。関係者の衝撃は大きいもので、本会議の冒頭で、両氏の冥福を祈って、それぞれ友人から弔辞が述べられました。

  会議は、以下の7つのセッションに分かれて口頭発表74件、ポスター発表10件の発表が行われました。

Session 1:Atomic-Scale Phenomena
Session 2:Thermodynamics, Kinetics and Phase Transformations
Session 3: Meso-Scale Phenomena and Microstructures
Session 4:Alloy Development and Processing
Session 5:Applications and Performance
Session 6:Corrosion
Session 7:Welding

  この高窒素鋼国際会議は、鋼に対する窒素の有効利用を図ることを目的として、世界各国から著名な研究者を集め、基礎研究から応用研究まで幅広い研究成果の発表の場、質の高い討論の場として高い評価を受けています。今年の会議の特徴としては、これまでN単原子の添加が主流であったが、N+Cという2元素のペア添加で、強度、耐食性、破壊靱性等の最適化を図ろうとする研究が増えてきたこと、N添加のみの時代から加工熱処理等による組織制御の時代に移ってきたこと、第一原理によるN原子の振る舞いに関するシミュレーションが多く発表されたこと、若い女性研究者の進出等であります。

  会議以外のソーシャルイベントもしっかり準備されており、ブールジェでの舟遊びや周辺地区への歴史探訪の旅など同伴のご婦人方にも好評のようでした。会議が終了した日の午後は砂浜でペタンクトーナメントが行われました。ペタンクは日本ではあまりなじみがありませんが、一言でいえば砂の上で行うカーリングといったところでしょうか。寒風吹きすさぶ砂浜での競技に参加者は少なかったのですが、日本からは一番お元気な高木先生が唯一参加され、初めてのペタンクを満喫しておられました。

  次回の高窒素鋼国際会議(HNS2006)は、2006年9月に中国、四川省九寨溝で開催される予定です。今回の会議には中国から次回の開催に向けた調査団が多数来ていました。

(耐食グループ 片田 康行)


左より、三浦先生、筆者、Dr. N. Akdut夫妻、高木先生、Dr. J-H. Schmitt夫妻
 


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