腐食シンポジウム開催報告


   “Symposium on Recent Trends in Corrosion Research”と題する腐食シンポジウムが、11月25日(火)に物質・材料研究機構内第一会議室において開催されました。
  金属材料が使われる環境は多様化しつつあり、それぞれの環境中における材料の腐食による劣化を抑制するためには腐食の機構を明らかにする新しい手法が求められています。また世界の中でも特にアジアでの経済発展に伴う金属材料の使用量が今後ますます増加する中、腐食研究の重要性が見直されつつあります。その様な背景の中、欧州、アジア、そして日本国内における腐食研究の潮流を知ることを目的として本シンポジウムは開催されました。当日、天気にはあまり恵まれませんでしたが、日本をはじめ、ドイツ、中国、インド、フィリピンの5カ国、約70名の方々に参加していただきました。
   本シンポジウムでは、ドイツMax-Planck- Institut für EisenforschungのStratmann教授、中国科学院金属研究所のHan教授、インドのAnna UniversityのMurugesan教授の他、東京工業大学の水流教授、大阪大学の藤本教授の各国を代表する腐食研究者をお招きし講演していただきました。加えて、物質・材料研究機構から片田博士、升田博士、九津見博士および篠原博士の所内の研究のアクティビティーを示す講演を加えて、合計9件の講演が行われました。腐食シンポジウムの写真
    講演内容は次の様な多岐の内容に渡り、活発な討論がなされました。

  • ケルビンプローブを用いた亜鉛めっき鋼板のポリマー塗装の剥離の解析と剥離抑制のコンセプト
  • 鋼への水素侵入に及ぼす錆層の影響 ・ Fe-Cr合金上の不働態皮膜の半導体的性質に及ぼす添加元素の効果
  • XPSを用いたステンレス鋼上の不働態皮膜の解析 ・ 高強度アルミニウム合金の大気腐食に及ぼす酸性雨の影響
  • 高窒素ステンレス鋼の開発と応用 ・ ケルビンフォース顕微鏡を応用した模擬海浜環境下での腐食進行の観察
  • フェライト系耐熱鋼の耐水蒸気酸化性の改善
  • ACMセンサーを用いた大気腐食の評価と大気腐食環境中での動電位分極曲線測定の新規な手法。

   本シンポジウムが、諸国での腐食研究のアクティビティーの一端に触れるきっかけとなるもので、また、研究者間の交流の場となったことを願っております。 なお、本シンポジウムはCBMMアジア株式会社の賛助を頂き開催されました。心より厚くお礼申し上げます。また、講演いただきました方々、シンポジウムを開催するにあたってご協力頂きました方々に感謝いたします。

 (腐食シンポジウム主査 金相グループ 秋山 英二)


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