「超鉄鋼で築く21世紀」シンポジウム報告


  日本鋼構造協会主催による標記シンポジウムが平成15年12月11日九州大学国際ホールにて開催されました。このシンポジウムは、日本鋼構造協会が平成14年度に実施した「超鉄鋼材料を活用した新構造に関わる課題の抽出調査」の報告を主体に、自動車産業における材料動向の紹介も含め、超鉄鋼の利用技術に関し異分野間の情報交換と討論を行うことを目的にしたものです。第1回を5月に東工大で開催し、今回は2回目となります。

  今回のシンポジウムの特徴は、後半のパネル討論にありました。九州地区で活躍されている土木、建築、造船分野の若手研究者3名の方々から、超鉄鋼利用技術に関する話題提供をいただいた上で討論が行われました(写真)。

  土木分野から、九州工業大学の山口栄輝助教授(工学部建設社会工学科)は、鋼橋新設では施工容易に加えて、メンテナンスの観点から点検調査の容易性が重要であることを強調されました。超鉄鋼適用で2次部材が減少すれば点検調査が容易になる期待感を示されました。また隅角部の板厚減により運搬・施工が容易になると話されました。

  建築分野から、九州大学の堺純一助教授(人間環境学研究院都市建築学部門)は、高強度鋼利用技術として、低降伏点鋼を用いた制振ダンパーと超鉄鋼の組み合わせによる損傷制御構造の有効性を指摘されました。また、コンクリート充填鋼管柱や芯鉄骨合成柱など合成構造についても可能性を示されました。

  造船分野では、九州大学の後藤浩二助教授(工学研究院海洋システム工学部門)が、超鉄鋼適用による軽量化で、燃費向上に加えて新しい構造様式の導入に期待を寄せられました。 また、石油掘削などの海洋構造物での耐海水腐食性の向上の必要性を話されました。さらに、超鉄鋼の適用に当たっては、溶接継ぎ手の性能(特に疲労)やぎょう鉄作業による材質変化などの基盤情報の整備が必要と指摘されました。

  討論では、これら3人の方々に、中西栄三郎氏(日産自動車テクニカルセンター材料技術部)と津ア(NIMS-SRC)もパネラーとして加わり議論を行いました。フロアも含めて熱心な討議が行われ、「構造物寿命のばらつきを無くせれば真の超鉄鋼」、「表層だけを耐候性にできないか」、「残留応力・ひずみを低減する溶接技術に期待する」、「自動車では鉄に980MPa級鋼の1.5倍化を求めたい」など、種々の興味深い意見が出されました。

  異分野の研究者の方々との情報交換と討論は、超鉄鋼利用実現に不可欠です。このような意見交換の場は、平成16年7月21,22日開催予定の第8回超鉄鋼ワークショップでも企画されています。今回と同様に熱い討論が行われることを期待しております。

 (超鉄鋼研究センター 副センター長 津ア 兼彰)


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