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物質・材料研究の『使える!メールマガジン』
vol.130
 
2022.10.12
カラム構造の液晶の写真
今月の一枚
カラム構造の液晶

黄葉した銀杏の葉のような美しい文様は、筒状のカラム構造を持つ液晶を偏光顕微鏡で捉えたもの。結晶の向きによって、写真のように黄色や青、黒に見えるが、電圧を印加すると筒が垂直に整列し、全体が黒一色になる。NIMSではこのような液晶分子を使って、繊細で柔らかな動きを実現する高分子アクチュエータの開発に取り組んでいる。

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“使える”最新材料・技術が集結!
NIMS WEEK2022事前予約受付中!

材料進化の最前線をお伝えする毎年恒例「NIMS WEEK」。「ともに打開へ。」をテーマに、企業の新たな価値を創造する“使える”材料・技術を一挙にご紹介します。今年は3年ぶりの現地開催! 11/14~15に東京国際フォーラムにて、材料と企業連携のエキスパートがお待ちしています! 
※ご参加には事前予約が必要です。特設サイトよりお申し込みください。

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蓄電池の“今”が分かる! 
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クリーンなエネルギー社会を目指して、蓄電池の解析・開発設計プロトコルの構築を推進するべく発足した先進蓄電池研究開発拠点。その研究の最前線をお伝えするシンポジウムを11/1(火)一橋講堂にて開催します。参加費は無料。蓄電池の“今”をぜひ体感してください!(申込締切:10/24(月)17:00)

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プレスリリース 9/16

NIMS公式ウェブサイト
TECHNIQUE
技術革新のキモ、ここにあり!
研究者の目のつけどころ
液体滑落技術を使った車のフロントガラスの写真
Vol.7
液体滑落技術
~水が勝手に移動する?! 液体が付着しない新しい撥水技術~

「撥水」という言葉を、誰しも一度は耳にしたことがあるだろう。傘、スキーウェア、靴などなど、撥水処理を施した商品は数多く見かけるし、車のフロントガラスやボディに撥水性能を与える塗布剤も広く流通している。

もう確立した技術なのかと思いきや、この撥水技術、実に奥が深い。いま私たちが使っている撥水技術は、疎水性材料塗布や表面形状制御によって水を水滴にして、水滴と撥水処理素材との接触面積を小さくする技術である。接触面積が小さいから、結果的に水が付着しにくい。

自動車などのフロントガラス用の撥水処理剤のパッケージに「時速〇km/h以上で雨滴が吹っ飛ぶ!」という類の謳い文句を見たことはないだろうか。これは水を水滴にして付着しにくくしたから、あとは水を移動させるための別の力(風力や重力)が必要ですよ、と言うメッセージである。つまり、水の付着を防ぐという意味ではまだ完璧とは言えず、技術革新が求められる材料表面処理技術でもあるのだ。
既存の撥水性能を超える表面処理技術を目指して研究しているのがNIMSの天神林研究員。天神林は「付着しにくい」ではなく「水が留まらない」表面処理という、これまでにない視点の撥水技術を開発した。

液体滑落技術の模式図
溶媒が揮発することによって下地層と潤滑液層に分かれる。1回のコーティングで済むため、手軽に使用することができる。
液体滑落技術の様々な用途の写真

ガラスだけでなく、金属、プラスチック、ゴムなど様々な基材に塗装可能。また、塗装方法もスプレーやチューブ内への送液など様々な方法が応用できる。

水滴を吹き飛ばすための別の力さえ不要にし、水が勝手に移動して滑り落ちてしまう表面処理技術であり、「液体滑落技術」と呼んでいる。
液体滑落を達成するための表面処理剤は、ナノ粒子、シリコーン樹脂、潤滑液と溶媒からなる液体である。これを、水を防ぎたい表面に塗布するだけで、表面に被膜が形成され、水を滑らせて取り除く表面処理が完了する。

鍵となるのは被膜の中に含まれる潤滑液。この潤滑液が水を滑落させるために重要だが、被膜の中に潤滑液が保持され、被膜中から染み出しつづけ、表面が潤滑液で覆われ続けるという新機能を実現した。その被膜に傷がついたとしても、被膜に自己修復機能がある点も新しい。
「同じ原理を使って、水以外の様々な液体を滑落させる表面処理技術への展開が可能です」と天神林研究員。水以外の様々な液体を滑落させうる、液体滑落技術に注目が集まっている。 

天神林研究員の顔写真
「撥水技術は、フードロスや防汚技術などの解決に直結する技術ですが、世の中に還元するためには機能開拓だけでなく簡便性も重要です。濡れるという現象(濡れ性)は撥水性だけでなく塗料の調整や成膜プロセスにも重要な役割を持つので、濡れ性を制御することで、簡便な手法でコートできる機能表面・界面の設計に挑み続けたいですね」(天神林瑞樹研究員)。
もっと知りたい!
液体滑落技術のキモ
天神林研究員の写真
NIMS WEEK

~「液体滑落技術」の開発者:天神林研究員が
NIMS WEEKに登場します!~

<11/15(火)Day2 @東京国際フォーラム>
★最新成果ポスターセッション
10:00~15:05
(コアタイム11:50~12:50、14:05~15:05)
「液体が“ツルツル”滑り落ちる
フッ素フリー撥水・撥油塗料の開発」
(※コアタイムは「液体滑落技術」について、天神林研究員が対面でご説明いたします)
★NIMS最新成果講演
10:50~11:05
「液体が“ツルツル”滑り落ちる
フッ素フリー撥水・撥油塗料の開発」
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BOOK
どっぷり浸かるサイエンスの世界
オトナ科学本
\今月はコチラ!/
本の表紙写真「ドミトリーともきんす」
「ドミトリーともきんす」
高野文子 著
中央公論新社
広報室の端っこで机を並べる3人からのおススメ!
*今回は紹介したい本がかぶった3人(NIMS NOW日本語版担当Y、見学担当M、メルマガ担当F)の座談会でお届けします*

Y:書評を見て購入したんですけど、マンガの絵のタッチや表紙のデザインに惹かれて、スッキリとした独特の空気感と、独創的なコマ割りも素敵だなって。
F:とにかく、きん子ちゃんが可愛い! それから、描かれている科学者の顔が、ご本人にそっくり(笑)。
M:二人とも、科学本の紹介なのにビジュアルばかり(苦笑)。
Y:確かに~(笑)。学生寮「ともきんす」に、日本を代表する科学者が住んでいたら…という設定で、管理人・とも子さんと娘・きん子ちゃん、そして4人の科学者が送る何気ない日常を通して、各研究のキモに触れられるストーリーになっています。
M:冒頭で時空のゆがみとか難しい数学の話題が出てきて、ちょっとびっくり。でも、頑張って理解して!という押しつけられる感じは全然なくて、現実と空想が入り混じっている不思議な世界に浸かれるのが心地良いよね。
Y:各科学者の著書も紹介されているんですが、原文からの抜粋が絶妙で、どれも読んでみたくなります!
F:描かれている科学者の人物像が、ご本人に似ているのかな?っていうのが気になった。朝永くんはウジウジして、きん子ちゃんに慰められたり(笑)。
Y:朝永くんと湯川くんの関係性も興味深いですよね。
M:最後の湯川くんの詩は感動したなぁ。
Y・F:うんうん(納得)。
M:「科学の奥底にふたたび自然の美を見いだす」って、もう詩人だよね。
F:同じことを、2020年にNIMS Awardを受賞されたVillars先生もお話されていたよね。
Y:そうそう、NIMS NOW Vol.20 No.2も併せて読んでみてください!(最後はちゃっかり宣伝…)

あらすじ

朝永振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎、湯川秀樹の4人の科学者と、一組の母娘が時空を超えて交流する物語。ノンフィクションとファンタジーが同居した不思議なストーリーの中で、彼らの研究や生き方のエッセンスをたっぷり感じられる一冊。

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