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コロイドフォトニック結晶の応用

 コロイドフォトニック結晶は、現在、世界中で研究が行なわれている非常にホットな材料であって、まだ、実用化された応用製品はありません。材料の特性を活かして、どのようなものが検討されているのか、以下に、代表的なものを紹介します。これから、いろんな新しいアイデアが出てくるものと期待されます。

構造色を利用した色材

 コロイド結晶を構成している粒子には色はついていなくとも、周期構造による光のBragg反射のために色付いて見えます。このような幾何学的な構造に起因する色のことを、一般に構造色と呼んでいます。色素を使う着色では、退色や有害性が問題になることがありますが、構造色ではそのような心配がありません。昆虫の発色も多くのものが構造色であると言われています。コロイド結晶を利用した色材という応用が考えられます。

光学検出式センサー

 これも構造色利用のひとつであるとも言えますが、コロイド結晶の構造色が、いろいろな原因で変化することを利用して、色の変化から、その原因となったものを検出しようというアイデアがあります。例えば、密充填のコロイド結晶の粒子の隙間に液体が浸み込むと、隙間の屈折率が変わります。Bragg反射条件には屈折率が因子として入っていますから、この液体の屈折率に依存して構造色が変わります。従って、逆に変化後の色から液体の屈折率を知ることで、液体の種類を同定できる可能性があります。あるいは、コロイド結晶の粒子間の隙間を高分子ゲルで埋めたコロイド結晶ゲルというものをつくることができます。高分子ゲルは、浸み込んだ溶媒の種類に応じて膨潤の度合いが変わり、これに伴って粒子間距離が変ります。それによって、やはり、構造色が変ります。あるいは、温度で膨潤度の変わる高分子ゲルというのもあります。この場合は温度変化が色の変化として検出されます。その他、コロイド結晶ゲルは外力で変形しますので、変形を色の変化で検出する変位センサーとして使うことも考えられます。

光学フィルター

 コロイド結晶は、特定の狭い波長帯の光を選択的に反射してカットする特性があります。これを利用して、特定の波長のレーザー光を通さない光学フィルターを作ることができます。このような光学フィルターは、例えば、レーザーメスで手術する際のメガネに使うことが考えられます。手術に使っているレーザー光が医者の目に入るのを防ぎながら、その他の波長の光を通すことで、患部をはっきり見ることができるわけです。

分光素子

 コロイド結晶がBragg反射する光の波長は、光の入射する角度によって変化します。あるいは、入射角度が一定であっても、もし、コロイド結晶の格子定数を変化させることができれば、反射波長は変わります。このことは、分光素子(異なる波長の光が混ざった光を、波長の異なる光に分ける素子)としてコロイド結晶が使えることを意味しています。格子定数を変化できるコロイド結晶としては、前出のコロイド結晶ゲルがあります。あるいは、粒子間に弾性変形するゴム材質を充填したコロイド結晶も作られています。

フォトニック結晶特性を利用した先端的な応用

 上記の応用は、いずれもコロイド結晶の持つBragg反射の特性を直接利用するもので、比較的わかりやすい単純なものでした。しかしながら、「コロイドフォトニック結晶の光特性」の項で述べたように、コロイド結晶はフォトニック結晶としての様々な特異的な性質を持っています。これらを利用した、より先端的な応用が考えられています。例えば、フォトニックバンドギャップによる光の閉じ込め効果を利用して、ミクロなレーザーが考えられています。光の速度が極端に遅くなる効果は、光の吸収や発光を起こす現象の増幅に利用することが可能です。あるいは、奇妙な屈折の性質を利用すれば、他の材質ではできなかった特性のレンズやプリズムなどの光学素子ができる可能性があります。これらの先端的な応用は、現在研究が進行中の課題です。応用研究は、まだまだ、始まったばかりであり、その他にも、今後、新しい応用のアイデアがどんどん生み出されていくでしょう。


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