プレスリリース
スゴイ湿気でもセットした髪が乱れないヘアスタイリング材料
~湿気を取り込むことで形状記憶効果が呼び起こされるポリマー材料の開発~
日本ロレアル株式会社
NIMSは、日本ロレアル株式会社と共同で、湿度に応答して形状記憶効果を発動するポリマー材料を開発しました。
概要
NIMSは、日本ロレアル株式会社と共同で、湿度に応答して形状記憶効果を発動するポリマー材料を開発しました。この研究成果は、髪の毛に塗って乾かすだけで高湿度環境でも望みのヘアスタイルをキープできるスタイリング材料へと応用できます。
ヘアスタイルは個人の自己表現や自信に大きな影響を与えるので、効果的で機能的なヘアスタイリング製品の需要が高まっています。一方で、毛髪は水分の影響を受けやすいため、多くの人が雨の日や発汗時などのヘアスタイルの崩れに悩みを抱えています。湿度への耐性を与えるヘアスタイリング製品として、一般にヘアスプレーやジェルが知られていますが、これらのほとんどは髪の毛に直接コーティングを施すことで髪の毛を湿気から保護することを目的としており、湿度の影響を軽減するに留まっています。そこで、高湿度環境下でもヘアスタイルを維持できる新たなスタイリング用材料の開発が望まれていました。
研究チームは、髪の毛を湿気から保護するのではなく、湿度に晒された時に形状記憶効果を発動する新たなスタイリング用ポリマーコンポジット材料を開発しました。この効果は、ポリビニルアルコール (PVA) と天然由来のセルロース微結晶 (CM) との水素結合を介したネットワーク形成によって発現するのですが、この水素結合が水分子を取り込んでも両者の結びつきを保持できる性質を利用しています。何もコーティングしていない髪の毛と比較して、PVA/CMコンポジットはCM量依存的に高いスタイリング効果を示すことが分かりました。また80%湿度条件下に6時間晒されると髪束は広がりますが、PVA/CMコンポジットをコートした髪束は形状回復が誘起され、もとのスタイリング形状へと近づくことが明らかとなりました。以上の結果から、今回開発したPVA/CMスタイリング材料は、湿度に晒される髪の毛の広がりを抑制するとともに、湿度を利用してスタイリング維持を向上させるという興味深い性能を示しました。さらに、コートしたPVA/CMコンポジットは、温水 (42℃) やシャンプーで簡単に洗い流すことができました。
今回の研究より、湿度が誘起する形状記憶現象のメカニズムが明らかになったことで、湿度に対してより効果の高いヘアスタイリング方法を提案できる可能性があると考えています。
本研究は、NIMS 高分子・バイオ材料研究センタースマートポリマーグループの宇都甲一郎 (独立研究者) 、荏原充宏 (グループリーダー) と、日本ロレアル株式会社リサーチアンドイノベーションセンターの研究チームによって行われました。
本研究成果は、Advanced Materials Interfaces誌の2023年11月1日にオンライン掲載されました。
掲載論文
雑誌 | Advanced Materials Interfaces |
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題目 | Humidity-Responsive Polyvinyl Alcohol/Microcrystalline Cellulose Composites with Shape Memory Features for Hair-Styling Applications |
著者 | Koichiro Uto, Yihua Liu, Mingwei Mu, Rie Yamamoto, Chinami Azechi, Mizuki Tenjimbayashi, Adrien Kaeser, Marie-Adeline Marliac, Mohammad Mydul Alam, Jun Sasai, Mitsuhiro Ebara |
掲載日時 | 2023年11月1日 |
DOI | 10.1002/admi.202300274 |
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