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静電気を貯める液体を開発し、伸縮自在の振動発電素子を実現

~脈拍・心拍センサなどの医療応用へ期待~

NIMSと産業技術総合研究所の研究グループは、静電気を半永久的にためられる液体状のエレクトレット材料を開発し、柔らかい電極と組み合わせることで、伸縮・折り曲げできる振動発電素子を世界で初めて実現しました。心拍や脈拍という非常に小さな振動を電気信号に変換でき、しかも伸縮、折り曲げなど様々に変形できるため、腕や胸に装着する電池レスの脈拍・心拍センサなど医療応用への展開が期待できます。

NIMSと産業技術総合研究所の研究グループは、静電気を半永久的にためられる液体状のエレクトレット材料を開発し、柔らかい電極と組み合わせることで、伸縮・折り曲げできる振動発電素子を世界で初めて実現しました。心拍や脈拍という非常に小さな振動を電気信号に変換でき、しかも伸縮、折り曲げなど様々に変形できるため、腕や胸に装着する電池レスの脈拍・心拍センサなど医療応用への展開が期待できます。

電荷を半永久的に保持できるエレクトレット材料は、電極との距離の変化で電圧を発生させることができるため、振動や圧力刺激を電気信号に変換する振動発電 (圧電) 素子やセンサ応用が期待されています。しかし、これまでのエレクトレット材料は、固体やフィルム状の素材が使用されており、複雑な形状へ変形できず柔軟性も低いため、脈拍・心拍センサなど体に装着しての利用を見据えて、伸縮・折り曲げなど様々な形状へ変形できる振動発電素子の開発が望まれていました。

本研究グループは、「ポルフィリン」という有機化合物を、柔軟性・絶縁性を持つ構造 (分岐アルキル鎖) で囲み保護することで、常温で液体でありながら安定的に電荷を保持できる材料を開発しました。さらに、この材料に高電圧をかけて静電気を帯電させた後、伸縮性の布地に含侵させて、ポリウレタンに銀メッキ繊維で配線した柔らかい電極で挟むことで、伸縮・折り曲げ可能な振動発電素子を開発しました。素子表面を指で押すと、±100~200 mVの電圧出力が得られ、少なくとも1ヶ月半以上の間は安定に駆動しています。

今後、液体エレクトレット材料の静電気の保持能力を向上させ、素子への加工技術の改良を重ねることで、医療現場での利用を目指します。また電圧—電流変換のシステムやキャパシタなどと組み合わせることで、振動で発電するIoTデバイス用の電源としての活用も視野に開発を進めます。

本研究は、国立研究開発法人物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 中西尚志グループリーダーと、国立研究開発法人産業技術総合研究所 センシングシステム研究センター 吉田学研究チーム長らの研究グループによって行われました。また本研究は 、日本学術振興会 科学研究費助成事業 (18H03922) およびTIA連携プログラム探索推進事業「かけはし」による研究支援のもとで行われました。

本研究成果は、Nature Communications誌にて2019年9月30日にオンライン掲載されます。




プレスリリース中の図 : 開発した液体エレクトレット材料 (左) と伸縮・折り曲げ可能な発電振動素子 (中、右)



掲載論文


題目 : Soft chromophore featured liquid porphyrins and their utilization toward liquid electret applications
著者 : ゴッシュ アビジット (NIMSフロンティア分子グループ) 、吉田学 (産総研) 、末森浩司 (産総研) 、砂金宏明 (NIMS先進低次元ナノ材料G) 、小林長夫 (信州大学) 、水谷泰久 (大阪大学) 、倉重佑輝 (京都大学) 、川村出 (横浜国立大学) 、楡井真実 (東京大学) 、山室修 (東京大学) 、高屋智久 (学習院大学) 、岩田耕一 (学習院大学) 、佐伯昭紀 (大阪大学) 、名倉和彦石原伸輔中西尚志(NIMSフロンティア分子グループ)
雑誌 : Nature Communications
掲載日時 : 英国時間2019年9月30日10時 (日本時間30日18時)
DOI : 10.1038/s41467-019-12249-8


本件に関するお問い合わせ

(研究内容に関すること)

国立研究開発法人物質・材料研究機構
ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA)

ナノマテリアル分野、フロンティア分子グループ

中西 尚志 (なかにし たかし)

Tel:029-860-4740

E-Mail: NAKANISHI.Takashi=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

HP: フロンティア分子グループ

国立研究開発法人 産業技術総合研究所
センシングシステム研究センター
スマートインターフェース研究チーム

吉田 学 (よしだ まなぶ)

Tel:029-861-2957

E-Mail:yoshida-manabu=aist.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

HP: 産業技術総合研究所 センシングシステム研究センター

(報道・広報に関すること)

国立研究開発法人 物質・材料研究機構 (NIMS)
経営企画部門 広報室

〒305-0047 茨城県つくば市千現 1-2-1

Tel: 029-859-2026

Fax: 029-859-2017

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国立研究開発法人 産業技術総合研究所
企画本部 報道室

〒305-8560 茨城県つくば市梅園1-1-1 中央第1

Tel:029-862-6216

Fax:029-862-6212

E-Mail:press-ml=aist.go.jp
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