また,1990年後半から繰り返しせん断変形加工(ECAP)法を用いて,微細粒鋼のバルク材を作製し,その機械的性質が検討されております。
この加工法では,図のような90度の孔型に通す場合は,1パス当たりに導入されるひずみ(せん断ひずみから相当ひずみに変換)は理論的に約1.15と見込まれています。 よって,10パス通過させれば11.5というとてつもないひずみを導入することが可能となります。 しかし,最近では“導入されるひずみには分布がある”ことが多くの研究者によって指摘されております。図は,試しに私が平面ひずみ条件で行った数値解析結果です。摩擦係数は0.05を使いました。見ての通り,ひずみ分布があります。中心近傍の相当ひずみは,理論値に近いですが,孔との接触近傍は摩擦の影響によって小さくなっています。 もし,10パス後のひずみ分布はどうなるのかと言われても,図で示した分布の10倍になることはありえません(と思う)。なぜなら,ひずみの分布があると言うことは硬さの分布があり,次の加工で導入されるひずみは相対的にやわらかい部分に集中するからです。よって,パスが進むにつれた分布や大きさがどうなるかについてはわかりません。さらに,材料の持つ応力−ひずみ曲線にも導入されるひずみ分布は変化します(次のページ参照)。 力不足なこともあり,2パス以降の解析は計算できませんでした。 よって,大きなひずみを導入することはできてもパス回数と組織の関係は示すことはできますが,ひずみと組織の関係を示すことはできません。 |