我々は骨と類似の化学組成とナノ構造を持つ水酸アパタイト/コラーゲン骨類似ナノ複合体 (HAp/Col) を開発し、その多孔体は国内で臨床応用されています。HAp/Colを病気や怪我で失った骨欠損部に埋め込むと、骨の正常代謝である「骨リモデリング」によって、徐々に (通常3ヶ月程度) 自分自身の骨に置き換わっていくことがわかっています。これは、HAp/Colが細胞によって自分自身の「壊れて治さなければならない骨」と認識されたためと考えられます。 このように、化学組成とナノ構造を制御することで骨に関連する細胞の骨吸収機能や骨増成機能を制御できることができることがわかってきました。これをチタンへのコーティングに応用すると、チタンに対する生体反応である「オッセオインテグレーション」を3倍速くできることがわかりました。HAp/Colに関しては、このような新しい機能を実現できるようなミクロ〜マクロ形状の制御を進めています。 一方で、チタンの表面をある条件で処理すると表面に酸化チタン (チタニア) のナノチューブが植立されることが解っていますが、このチタニアナノチューブを分極することで血栓形成を阻害する表面を作製することに成功しています。これは、化学組成とナノ構造に加え、電気的性質を制御することによる新機能です。 さらに、従来の生体用セラミックスに加えHAp/Colのようなセラミックスナノ粒子を含むような材料に対する恭順的な試験法などを提案し、ISOの標準文書の発行に繋げていくことで、日本の生体材料開発・実用化・国際競争力の強化に貢献しています。