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門脇 万里子 Mariko Kadowaki
29歳:三重県出身
構造材料研究センター 材料評価分野 腐食研究グループ 研究員

「U-35」とは?
博士の学位取得後8年未満の研究者を支援する「科学研究費助成事業(科研費)・若手研究」の応募資格者(おおよそ35歳以下)を対象に、NIMSで活躍する研究者やエンジニアおよび、その研究を支える事務職員をご紹介します。

金属の腐食(さび)に関する研究をしています。金属は建物や自動車、燃料電池などの小型製品、生体材料など身の回りのあらゆるところで使われていますが、その最大の弱点とも言えるのが腐食です。学生時代から「どうしたら腐食に強い金属が作れるか?」を日々探求し、鉄に炭素や窒素を添加すると耐食性が向上することを実証しました。今は、既存材料の更なる耐食性の向上と新規材料の開発を目標に、実験に加え、合金の作製やシミュレーション、材料の評価など様々なアプローチで研究を行っています。

門脇万里子

自ら合成した金属を塩水に浸し、電流を流して腐食を促進させ、その解析まで行う。実験プランはもちろん、装置の組み立てなども自身で行う。

子供の頃から理科は好きでしたが、科学者になりたいと思ったことはなくて(笑)。高校で進路を考えていた時に、東北大のオープンキャンパスで見学した材料学科がすごく面白そうだったんです。具体的に何がしたいとは決まっていませんでしたが、材料は分野が幅広いので、大学で何か見つかるかな、と淡い気持ちで進学しました。そして出会った研究が“腐食”です。製品の劣化や大事故の原因につながる腐食――そのメカニズムを解明して、耐食性に優れる金属を作りたい。研究を続けるうち、そう強く思うようになりました。そんな中、大学院博士課程一年目にインターンシップとしてNIMSに3か月、滞在しました。最先端の現場で珍しい装置を使いながら、多くを学ぶことができた刺激的な毎日でした。NIMSに就職が決まったときは本当に嬉しかったです。

門脇万里子

研究の相談に快く応じてくれる片山英樹グループリーダーは心強い存在。「やりたいことを伝えると環境を整えてくださって、新しい挑戦をいつも応援していただけるのが嬉しいです」。

NIMSに来て3年目になりますが、恵まれた環境の中、自由な裁量で充実した研究生活を送れています。NIMSの魅力のひとつだと思うのが、「材料研究ならNIMS」と言われるとおり、様々な材料分野のトップ研究者が集まっていて、その方々にアクセスしやすい点です。私は実験による腐食挙動の解析が専門ですが、計算や理論、鋳造・鍛造など分野外のこともその道のエキスパートに助言をいただきながら取り組んでいます。新しいことにチャレンジしやすい雰囲気もNIMSの特長だと思いますね。

門脇万里子

研究が成功したときの達成感はひとしお。「ただ、うまくいくことばかりではないので、ひとつの実験に没頭するというよりは、いくつかの実験を同時並行して『もしダメでもこっちがある』という風に、悲観的な状況を作らないような工夫をしています」。

今は主に鉄鋼材料とアルミニウム合金を対象としていますが、将来的にはもっと色々な材料の腐食を研究して知見を広げたいです。海外も含め、企業や他機関との共同研究にも積極的に挑戦したいと思っています。

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【取材・文】藤原 梨恵(NIMS広報室)
【写真】石川典人