イベント

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第23回NBCI-NIMS合同連携セミナー(構造材ゼミ028)

2016.06.28 15:00 ~ 2016.06.28 18:20

開催目的

本セミナーは、NBCI(ナノテクノロジービジネス推進協議会)材料分科会とNIMSが以下の目的に基づき共同企画し、隔月でつくばにて開催しています。
① NIMSは、自分たちが進める最先端研究を民間企業に紹介することにより、その最先端研究に対する民間企業のニーズを知る。
② NBCI会員企業は、NIMSが進める最先端研究が自分の仕事に如何に役立つかイメージする。
③ NIMSから紹介された研究テーマで興味深いものについては、連携の方法を含めてNIMSとNBCI会員企業との連携について考えていく。
 
受講者は原則としてNBCI会員に限られますが、定員の枠内であれば、NBCIを通して非会員の方の受講も歓迎します。受講を希望される方はNBCI事務局にお問い合わせください。
 
お問い合せ先:NBCI材料分科会事務局 
E-Mail:nbci08=nbci.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください) 

プログラム

日時

2016年6月28日(火)15:00-18:20(懇談会を含む)

場所

千現地区 先進構造材料研究棟 5Fカンファレンスルーム

プログラム

15:00-17:15
 講演、暴露試験場の見学、質疑
17:20-18:20
講師を囲む懇談会 
(懇談会参加費1,500円)
 
テーマ:損傷とナノテクノロジー(その1 腐食)
-腐食の基礎とマルチスケール解析への試み-
 
講師: 
片山 英樹(かたやま ひでき)
構造材料研究拠点 材料信頼性分野 腐食特性グループ グループリーダー

プロフィール:「大気環境での腐食はさまざまな環境因子が複合的に影響を及ぼす現象なので、フィールドでの腐食試験も大切にしています。大気腐食研究では、屋外での腐食現象を再現し、加速試験に繋がるシミュレーション技術や手法がブレークスルーにつながると考えています。」

概要

 概要:
腐食は電気化学的なマルチスケール現象で、従来は主にマクロアプローチが盛んでしたが、近年、腐食原因欠陥を直接見ようとするナノ、ミクロ分析の取り組みも進んでいます。一方で、腐食は複雑系現象であるため、種々の因子の関与がありえます。その中でどの因子が最も決定的かを絞り出すためには、有効な研究方法論が必要です。NIMSは長い年月を掛けて、「大気腐食」という複雑系に取り組んできました。その成果を余寿命診断などの構造メインテナンス技術や新しい材料技術へとフィードバックする段階となっています。この現象に系統的に取り組んできた片山英樹さんに概論とトピックスの紹介をしてもらいます。受講者には、腐食の基礎知識を理解しつつ、複雑な現象をどう紐解いていくかの実施例を知るきっかけになると思います。また、質疑では腐食に関する受講者からの様々なご関心からのご質問も歓迎します。

トピックス1)鉄鋼材料の大気腐食のシミュレーション(1)。ここでは、屋外環境での炭素鋼の腐食について、気温や相対湿度、付着塩の量やサイズ、材料温度などに着目してその腐食をラボ内でシミュレーションした研究例を紹介します。

トピックス2)ケルビンフォース顕微鏡によるナノレベルでの鉄鋼材料の腐食解析(2)。表面形状および表面電位を同時に非接触で測定可能なケルビンフォース顕微鏡を紹介するとともに、より広範囲に測定できるように改造したスーパーケルビンフォース顕微鏡で、薄い水膜下での鉄鋼材料の腐食をその場観察で解析した例を紹介します。
 
参考文献:
 (1) Katayama, Noda, Masuda, Nagasawa, Itagaki, Watanabe: ”Corrosion simulation of carbon steels in atmospheric environment”, Corrosion Science, 47(10), (2005), 2599-2606.
 (2) 升田:「ケルビンフォース顕微鏡を用いた金属表面の腐食反応の解析」, 表面科学, 22(5), (2001), 282-291.
 

開催報告

定員20名募集のところ、18社から21名の参加があった。内3社は、NBCI非会員企業からの参加であり、NBCI事務局を含めて24名の外部参加者となり、盛会だった。
60分の講演では、講師は、腐食という身近な現象が実は複雑な影響要因を持つため効果的な研究アプローチが必要なことを原理に基づき分かりやすく説明した。すなわち、腐食は電気化学的なマルチスケール現象であるが、従来からのマクロアプローチに加えて、腐食原因欠陥を直接見ようとするナノ、ミクロ分析の取り組みが進んでいることを紹介した。複雑系現象において、どの因子が最も決定的かを絞り出すためには有効な研究方法論が必要で、NIMSが長い年月を掛けて取り組んできた複雑系である「大気腐食」について、そのアプローチと成果を述べた。これらの成果を余寿命診断などの構造メインテナンス技術や新しい材料技術へとフィードバックする段階となっている。
30分くらいの見学では、屋外で鉄鋼材料の試験片を置いて、腐食(さび)の経過観察をする実験場について、講師が直接引率し、紹介した。
質疑応答は、いつものように質問時には一つの質問という原則で、企業参加者全員に対しQ&Aが行われた。今回は参加者が多かったため、全員に対する一回目のQ&A で終了せざるを得なかった。余寿命診断の精度やその診断に影響を与える要因、ケルビンフォース顕微鏡の原理、錆びの伝播の仕方のメカニズム等、多岐にわたる質問が出された。
後日、受講者からの文章での感想や意見が多く寄せられ、事務局を介して、講師にフィードバックされた。概ね満足度の高い反応が寄せられた。また、後日寄せられた質問には講師から回答がなされている。
          セミナー概況
   講演する片山 英樹グループリーダー
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