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物質・材料研究の『使える!メールマガジン』
vol.139
2023.8.9
ネオンとヘリウムを可視化した写真
今月の一枚
タマムシ色の気体
真夏の樹木で光沢を放つタマムシのような美しい色合い——実は、気体(上:ヘリウム、下:ネオン)を可視化したもの。NIMSが開発した気体識別用感圧デバイスを使うと、目に見えない気体が、こんなにも色彩豊かに浮かび上がる。現在、この技術を環境ガスや生体試料の測定へ応用すべく、デバイスの感度向上や最適化に取り組んでいる。
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★気体が玉虫色に『見える』
(プレスリリース 2022.11.28)
★NIMS NOW(Vol.23 No.2 P.4)「気体が“見えた”!」
★NIMS使える!メールマガジン(No.135)
「研究者の目のつけどころ:気体識別用感圧デバイス」
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HOT TOPICS(NIMSの旬な情報)
 
今、この材料がアツい! Vol.13
「高純度六方晶窒化ホウ素(h-BN)」
 
U-35 ~材料研究の未来を拓く若者たち~
『File3 鈴木 瑞穂』
 
HOT TOPICS
NIMSの最新情報をお届け!
NIMS-OSの図
材料開発のDXを加速する新戦略!
自律自動実験ソフトウェア「NIMS-OS」
プレスリリース 7/20
材料開発のDXが加速する中、材料の合成・評価を自動で行うロボット実験装置や、材料のデータ分析・探索を行うAIの開発が世界中で進んでいます。ただ、それらは異なる技術として開発されてきたため、双方が有機的に連携していないことが課題でした。この度、NIMSはこの二つを組み合わせたオープンソフトウェア「NIMS-OS」をリリース。ロボットとAIのシームレスな連携により、革新材料の早期発見に貢献します!
 
....and more!
 
電気二重層トランジスタの模式図 神経系の動作をマネする
世界最高速度の電気二重層トランジスタ
プレスリリース 7/7
 
NIMSアワードのロゴ NIMS Award受賞者にDierk Raabe氏が決定
プレスリリース 7/12
 
 
NIMS公式ウェブサイト
 
TREND
材料の潮流をつかめ!
今、この材料がアツい!
h-BNの写真
Vol.13
高純度六方晶窒化ホウ素(h-BN)
~純度99.9999%! 世界のグラフェン研究を支える超高品質なh-BN~
 
キラキラと宝石のようにきらめく物体は「六方晶窒化ホウ素」。通称h-BNと呼ばれる、窒素原子とホウ素原子から成る結晶だ。その一粒一粒を見てみると、ガラスのように透き通っている。それもそのはず、この結晶の純度はなんと99.9999%。NIMS独自の製法によって、不純物が極限まで排除された超高純度なh-BNなのだ。幅1mmにも満たないこの小さな高純度h-BNが、実は世界のグラフェン研究に欠かせない存在となっている。
グラフェンとは、炭素原子が蜂の巣のように六角形に連なったシート状の物質。従来の半導体とは比較にならないほど電子の移動度が高く、熱伝導性にも優れ、軽くてしなやか、強度が高いなど数々の特徴を併せ持つ。一方で、厚さ原子1個分という極薄ゆえに、非常に不安定で、接する物質の影響を受けやすく、性能を正しく評価するのが難しい。 3万トンプレス機の写真
国内最大級のプレス機「3万トン高圧プレス機」。1984年、人工ダイヤモンドなど高圧高温を要する材料合成を行う目的で導入された。現在は主に高純度h-BNの合成に使われている。
そのグラフェンを安定的に支える土台として活躍しているのが、NIMSの谷口研究員・渡邊研究員によって生み出された高純度h-BNだ。3万トンプレス機という巨大装置(写真右上)を使い、4万気圧・1600度の高温高圧下で10日間をかけて作られる高純度h-BNは、グラフェン同様、完全に平坦なシート状で、不純物をほぼ含まず、電子の動きを妨げない絶縁体——まさにグラフェンの基板として理想的な条件を兼ね備えている。
発光するh-BNの写真
電子線を充てると紫外線を発光するh-BN。渡邊によるこの発見が、その後のグラフェン研究に大きな影響を与えることとなった。
もともと谷口と渡邊は、結晶構造の異なるc-BN(立方晶窒化ホウ素)の高純度化研究を行っていた。c-BNはダイヤモンドに似た性質を持つ物質で耐環境性の高い半導体の材料として期待されている。h-BNはこのc-BNを作る際に、同時に結晶化された物質だった。渡邊はh-BNにも何か面白い特性があるはずと考え、電子線の照射を試みた。
すると、h-BNは高純度ダイヤモンドをはるかに凌ぐ、異常に強い紫外線発光を示すことを発見。谷口が行ってきたc-BN高純度化のための様々な工夫により、その副産物ともいえる高純度のh-BNが誕生していたのだ。
これをきっかけに、二人は紫外線発光デバイスへの応用研究に着手、さらに2009年、コロンビア大学の研究チームが高純度h-BNをグラフェン研究に用いて成果を発表。すると、世界中から提供依頼が舞い込むようになり、これまでに発行された関連論文は1700報を突破、今なお最先端のグラフェン研究に貢献し続けている。 谷口研究員の写真
3万トン高圧プレス機に原料を仕込む谷口。高純度h-BNの合成には、それまで超高圧下で様々な結晶を作り続けてきた谷口のノウハウが凝縮されている。
その功績が称えられ、2022年、二人は科学に極めて大きく寄与した研究者に授与される「クラリベイト引用栄誉賞」に輝いた。
西口研究員の顔写真
「クラリベイト引用栄誉賞」を受賞した谷口(右)と渡邊。作製した高純度h-BNを世界中の機関へ提供し、材料研究の進歩に貢献し続けている功績が認められた。
「地味な材料でも、大型の高圧合成装置による高純度化に関わる研究を長い間支えて下さったNIMSの研究環境と、その取り組みを尊重して下さった多くの共同研究者に感謝します」(谷口)。「2次元原子層科学の共同研究者の皆様の非常に高度な研究アクティビティのおかげで、たいへん栄誉な賞をいただきました。感謝の気持ちでいっぱいです」(渡邊)。
今日も谷口は、世界中からのオファーに応えるべく、3万トン高圧プレス機に原料を仕込む。渡邊は、応用を目指した気相合成法による大面積hBN合成法の開拓に挑む。二人のh-BNを巡る旅はこれからも続く。
もっと知りたい!
アツい高純度h-BNの世界

★ニュース(2022.9.30)
「『クラリベイト賞受賞』をNIMS研究者2名が受賞」

★NIMS NOW Vol.23 No.2「Research Digest 2022総集編」P13
「唯一無二の結晶のつくり手、『クラリベイト引用栄誉賞』受賞!」

★NIMS公式YouTubeチャンネル「まてりある’s eye」
「論文引用5万7千件!驚異の世界最高水準の結晶がここに」

RISING STAR
材料研究の“期待の星”
鈴木瑞穂さんの写真
 
人事室の福利厚生係として、NIMSで働いている皆さんの共済組合証の発行に関する手続き、扶養の認定・取消、雇用保険の給付関係などの業務に携わっています。4月末に異動になったばかりなのですが、皆さんの生活に直結する大事な業務ですので、日々勉強しながら必死に取り組んでいるところです。
入所以降、経営戦略室、文部科学省への出向、企業連携室と様々な部署を経験させていただきました。中でも印象に残っているのが、一年目の経営戦略室での視察対応業務で、ロジ周り全般を担当したことです。官公庁等のVIPの方々がNIMSに視察に来られる際に...
\この続きは特設サイト「材料のチカラ」でお読みいただけます/
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※「U-35」では、博士の学位取得後8年未満の研究者を支援する「科学研究費助成事業(科研費)・若手研究」の応募資格者(おおよそ35歳以下)を対象に、NIMSで活躍する研究者やエンジニア、その研究を支える事務職員をご紹介します。

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