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読者の皆様

今月は邱海主任研究員からの報告です。邱海主任研究員は超微細粒鋼の溶接継ぎ手の靭性の研究を担当しています。

先月は、母材の靭性(吸収エネルギー)についての報告でしたが、今月は溶接ボンド部靭性について報告致します。
高Al-高Si超微細粒耐候性鋼の特徴的な溶接ボンド部の組織とその靭性について報告です。

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Al-Si耐候性高強度鋼溶接ボンド部靭性の検討

冶金グループ 邱 海
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リサイクル容易、かつ環境にやさしい780MPa級Al-Si耐候性鋼をNIMSで開発しました。Al、Siは耐食性向上元素である一方、脆化元素でもあります。Al−Siの添加による母材の靭性低下は結晶粒の微細粒化によって改善されましたが、溶接ボンド部の靭性に及ぼす影響はまだ解明されていません。

本研究では、再現技術により、0.10C-0.6Si-0.6Al、0.17C-0.6Si-0.6Al、0.10C-0.8Si-0.8Al、0.17C-0.8Si-0.8Al耐候性鋼溶接ボンド組織(800℃から500℃までの冷却時間は約8秒)を再現しました。溶接再現ボンドを用いて、シャルピー衝撃試験を行い、吸収エネルギーと延性破面率のフルカーブを得ました。試験結果より、Al-Si鋼のボンド靭性は炭素当量同レベルのSM490C鋼より優れ、0.17C-0.6Si-0.6Al鋼のボンド靭性は市販QT材HT780鋼並みとなります。

低炭素低合金溶接構造用鋼において、ボンド部の切欠き靱性(シャルピー衝撃試験における吸収エネルギー)は、炭素当量と強い相関関係にあり、炭素当量の増加とともに靭性は低下します。炭素の影響は最も顕著です。しかし、本研究では、それに反して、炭素量が高いほど、ボンド靭性が良くなる現象が見られました。

炭素量増加により、変態温度が低下させ、低温でベイナイトへの変態を生じていました。高Al、Siの添加により、炭化物の析出が抑制され、また、変態温度が低いため、細粒のパケット状の単位でそれぞれの方位が異なるベイナイトが生成していました。このような組織の生成により、破壊単位が小さくなって、C量が増加しても、切り欠き靱性が低下しないことを実現しました。

参考文献

  1. 邱海、西村俊弥、平岡和雄:土木用微細粒高強度耐候性鋼での溶接性改善策、第9回超鉄鋼ワークショップ、2005年7月20-21日、つくば国際会議場、物質・材料研究機構、p.52-53.

  2. 海、西村俊弥、平岡和雄:Strength and ductility of the welded joint of the ultra-fine weathering steel、第9回超鉄鋼ワークショップ、2005年7月20-21日、つくば国際会議場、物質・材料研究機構、p.182-183.