放射線による生体への影響は、どれだけの放射線を受けたかの累積の総量によるものとされています。物体が放射線から受けるエネルギーの強さは吸収線量 :
Gy (グレイ) という単位で表されます。1Gyは1kgの物体が1J (ジュール) のエネルギー
※1を受けたときに吸収した放射線の量です。しかし放射線にはα線、β線、γ線、中性子線など様々な種類があり、同じエネルギーでも生体への影響は放射線の種類によって異なります。そこで放射線の強さだけではなく、種類も調べて、種類ごとに係数 (放射線荷重係数
※2) を掛けることで生体への影響の強さを表すことが必要です。この生体への影響を考慮した放射線量の単位が線量当量 :
Sv (シーベルト) です。
たとえば、体重1kg当たり同じ1Jのエネルギーを吸収する場合でも、放射線がすべてβ線 (荷重係数=1) の場合、あるいはα線 (荷重係数=20) の場合の放射線量は、それぞれ
1[Gy] × 1 (荷重係数) = 1[Sv] (β線の場合)
1[Gy] × 20 (荷重係数) = 20[Sv] (α線の場合)
となります。
※3放射性物質は、原子核の崩壊に伴って放射線を出します。原子崩壊は一度に起こるのではなく、物質によって異なる頻度 ─ 全般的に最初に多く、徐々に少なくなっていく ─ で起こります。「半減期」はこの速さを表す目安で、半減期の短いものほど最初の崩壊頻度が大きく、また急速に少なくなっていきます。そのほか放射性物質の拡散による希釈などの影響もあって、曝される放射線の強さは刻々変化します。そのため、その時点での放射線量の強さを表す指標として、時間当たりの線量当量Sv/h (シーベルト毎時) が用いられます。この値に、その場所に在留した時間を掛けて総和したものが受けた放射線の総線量当量になります。新しい放射線源の発生がなければ、時間当たりの放射線量は上記の理由から次第に減少するため、放射線被曝により受ける最終的な総線量当量は一定の時間が経過した後は、それ以上の増加がほとんど見られなくなります。
※1 1Jは、水1gの温度を約0. 24℃引き上げる程度のエネルギーです。
※2 他の放射線については、荷重係数は下の表のようになります。
放射線の種類 | 放射線荷重係数 |
α (アルファ) 線 | 20 (生体影響が大きく、直接接触や摂取による内部被曝では重大な問題となる。一方で空気中での透過力が非常に弱いため、外部被曝による体内へのの影響はほとんどないとされている) |
β (ベータ) 線 | 1 |
γ (ガンマ) 線 | 1 |
中性子線 | 5~20 (エネルギーによって数値が変わる。100keV-2MeVのエネルギーを持つ高速中性子でもっとも大きい) |
※3 生体組織の場合は、さらに臓器ごとの影響差を考慮した係数 (組織荷重係数) を掛けますが、ここでは省略しています)
※4 単位表記のmSv(ミリシーベルト) =0.001Sv、
μSv (マイクロシーベルト) =0.001mSv=0.000001Svを表します。