α-サイアロンの生成が核形成律速であることに着目し、核添加を利用して不安定相であるCe-α-サイアロンの合成に成功した。また、α-サイアロンおよび他の窒化物の格子間に、付活剤を置換型固溶させることにより新規蛍光材料を開発した。液相焼結炭化ケイ素のおいては、β→αの相転移と組織発現の関係を解析し、自己複合化組織を再現性よく発現させる研究を行った。また、レ-ザCVDを用いてBN系ナノバル-ンを初めて合成した。
Ce-α-サイアロンを高分解能電顕で観察し、その結果から積層欠陥のモデルを立て粒成長機構を考察した。窒化物セラミックスの粒界に耐熱性化合物を結晶化させ、相境界のナノ構造(Y-α-サイアロン/YAG、Si3N4/Yb4Si2O7N2(J))を観察し、直接結合が成立している場合に優れた高温強度と耐クリ-プ性が達成される事を確認した。
3.非酸化物の機械的特性
液相焼結後、粒界相の組成および構造の制御を行う粒界制御の研究を行い、1500℃以上まで強度を維持する窒化ケイ素と炭化ケイ素の高耐熱性材料を開発した。また、高温において亀裂進展挙動を観察し、焼結体の組織と高温特性の関係についての知見を得た。
β-Si3N4を出発原料としてα-サイアロンを合成する際に、少量のα-サイアロン粉末を核として添加すると生成速度が大幅に促進される事実から、α-サイアロンの遷移的液相焼結に核形成過程が大きな影響を及ぼすことが明らかになった。そこで、従来構造が不安定で合成が困難とされていた、大きなCeイオンを安定化剤とするCe-α-サイアロンを合成する目的で核を添加し、図1のように柱状に発達したCe-α-サイアロン粒子を含む焼結体を得た。格子内に多くの積層欠陥が存在することからも、熱力学的に不安定相であると考えられる。この方法は、新規サイアロンを合成することにより新規材料の開発を行うのに有効である。
Fig.1 Ce-α-サイアロンの透過型電顕 写真
EDXによる組成分析は図の矢印で示した部分。
LaSi3N5はSiN4四面体で、α-サイアロンはSi(N,O)4四面体で形成された大きな空間を持ち、その格子間原子の一部を光学活性な原子で置換することにより、耐熱性の高い新規蛍光材料になる事を見出した。例えば、Euをド-プしたCa-α-サイアロンの発光スペクトルは図2のように570nm付近にピ-クを持ち、酸化物蛍光体より長波長である。50%置換した場合に最高の強度を示し、その上下では低下した。この材料は、青色ダイオ-ドを光源として高輝度の白色ダイオ-ドとして実用化できる可能性が出て来た(東北大学との共同研究)。
Fig. 2 Euド-プCa-α-サイアロンの発光スペクトル[詳細図はこちら]