溶接・接合技術グループ

2020.07.15 更新

溶接・接合技術グループでは溶接技術の開発をはじめとして、溶接現象を利用した金属の3次元造形技術の研究や、非溶融で接合を行う摩擦攪拌接合 (FSW) についても研究を進めています。さらに、溶接現象や高温金属の溶融・凝固挙動解の理解を深めるために、機械学習を活用したアーク溶接の研究や、放射光X線を利用したアーク溶接のその場観察を行うことで溶接現象の解明と溶接技術の高度化を目指しています。

専門分野・研究対象

1. 溶接材料開発

NIMSで開発される新しい材料に対して、溶接プロセス開発や溶接材料開発を行っています。近年では、制振ダンパーで使用される高Mn鋼用の溶接材料を開発し、実構造物に使用されました。


2. 機械学習を活用した溶接現象の理解と解析

アーク溶接現象は固相-液相-気相-プラズマの4つの状態がマルチスケールで影響する複雑な現象です。このため、アーク溶接条件とアーク溶接部の特性(溶融状態、継手強度、疲労特性等)の関係も複雑で解析が困難です。アーク溶接条件-溶接部特性関係を実験式のように理解しやすい形でモデル化する独自の機械学習技術の開発も含めて、アーク溶接条件-溶接部特性の関係の定量的かつ体系的な理解を目指した検討を行っています。

一般的なニューラルネットワークとLSRF5法(開発手法)で得られる入出力関係式の比較


LSRF5法で得られたTIGアーク溶接部の溶融形状予測結果




3. 溶接技術を応用した金属3D造形技術の高度化

アーク溶接技術は金属溶融・凝固技術であり、自由な三次元構造を製作する金属3D造形技術(Wire and Arc Additive Manufacturing: WAAM)へ応用されています。アーク溶接技術に関する従来知見を活用して、WAAM技術の高度化を目指しています。これまでにアーク溶接部の変形低減のために開発された組成制御鉄鋼材料をWAAM素材として用いることで、造形部の変形量を低減できることを実証しました。さらに、WAAM技術を用いて高強度鉄鋼材料と高延性鉄鋼材料をミリスケールで複合化することで、高強度と高延性を兼備する複合鉄鋼材料の創製に関する研究を進めています。

WAAM技術の概要


組成制御鉄鋼材料の利用による造形部材の変形低減効果




4. 非溶融接合技術(摩擦攪拌接合)の開発

固相接合技術の一つとして摩擦攪拌接合(FSW : Friction Stir Welding)が注目されています。FSWは高温での強加工プロセスのため、動的回復、動的再結晶、粗大化などの複雑な組織変化を経て接合部の組織が形成されます。摩擦攪拌中の材料流動を正確に特定する新規手法により、積層欠陥エネルギーや再結晶温度の異なる金属材料 (Al、Cu、黄銅、Agなど) について微細組織や集合組織の発達過程を統一的に理解することで接合機構や微細組織形成機構の解明を行っています。

摩擦攪拌接合中の微細組織の発達過程




5. 放射光X線を利用したアーク溶接過程のその場観察

大型放射光施設SPring-8で得られるX線は、高輝度、高平行度のため、高い時間分解能と空間分解能で凝固現象の観察が可能となり世界的に注目されています。放射光X線イメージングやX線回折を利用して、Al合金やステンレス鋼などを対象にアーク溶接中の凝固組織過程のその場観察を行っています。結晶の成長過程、凝固割れの発生・伝播過程、液相の濃度分布や固相率の変化、ひずみやひずみ速度分布の変化、凝固脆性温度範囲の直接測定など、その場観察でしか得られない様々な知見を基に凝固割れの形成機構の解明に取り組んでいます。

放射光X線を利用したアーク溶接中のその場観察装置と凝固割れ形成のX線透過像




6. 異種金属材料接合プロセスの開発

熱電発電の原理となるゼーベック効果はあらゆる異種材料の接合で発現しますが、金属材料ではその効果が小さく熱電発電には不向きとされてきました。この弱点を克服するために、銅とコンスタンタン (55%Cu-45%Ni) について、拡散接合やレーザー溶接により大面積の接合継手を作成することで熱電発電が可能であることを確認しました。継手の接合界面の形状や組織の制御により、熱電発電機能を向上させる接合プロセスの開発を進めています。

銅−コンスタンタンレーザー溶接継手の144対直列モジュールの900℃における熱電発電特性


銅−コンスタンタンレーザー溶接継手断面のSEM組成像および銅、ニッケル、マンガンのマッピング像




お問い合わせ先

溶接・接合技術グループ
〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
E-Mail: NAKAMURA.Terumi=nims.go.jp([ = ] を [ @ ] にしてください)