耐疲労合金設計グループ

2023.04.01 更新

耐疲労合金設計グループの研究目的は、金属の振動、疲労、塑性、相転移に関わる諸現象を微細組織から解明し、この理解に基づいた新たな材料開発により、様々な社会課題の解決に貢献することです。地震から建物を守る制振ダンパー用に実用化されている、従来比10倍の超長疲労寿命鋼の変形機構解明や性能改良、鋳造材料の開発とプロセス検討、金属疲労におけるき裂 - 塑性 - 転位の関係解明などに取り組んでいます。

専門分野・研究対象

1.新しい制振オーステナイト鋼とその溶接技術の開発

鋼材制振ダンパーは、ダンパー鋼材の弾塑性変形履歴により、地震動を熱エネルギーに変換して吸収し、建物を地震から守ります。これまで従来比10倍の超長疲労寿命を有する新しい鋼材Fe-15Mn-10Cr-8Ni-4Si (質量%) を開発し、耐久性に優れた新型制振ダンパーとして、2014年には社会実装に成功しました。第一世代制振鋼の普及促進に努めると共に、溶接性、耐食性、コストなどの観点から、より高性能で社会普及に適した第二世代の制振オーステナイト鋼開発に取り組んでいます。2018年には、連続鋳造法で作製した長尺の板材を用いて、一般建築鋼材との新しい溶接技術によって製造された溶接構造制振ダンパーも実用化されました。




2.鋳造材料の開発とプロセス検討

金属材料に形状を付与する方法の一つに鋳造があります。鋳造には複雑形状を作りやすいというメリットがありますが、一般的には展伸材に比べて材料特性が劣ります。また偏析や鋳造欠陥などが多いという理由から、鋳造性が重視され材料開発が限定的になっています。そこで、優れた特性を持つ展伸材や圧延材の設計指針を参考にし、最適な組成やプロセスの検討を行い、新しい鋳造材の開発や鋳造時における問題の解決に取り組んでいます。


3.金属疲労におけるき裂-塑性変形-転位関係

疲労は機械・構造物の破損原因の大半を占め、その対策は安全性・信頼性確保の上で非常に重要な問題です。疲労破壊は巨視的には繰返し荷重によるき裂の発生・進展として観察されますが、微視的には繰返し塑性変形つまり転位運動により生じます。すなわち、疲労メカニズムの理解のためには各スケールにわたる不可分な現象を包括的に調査する必要があります。そこで、フラクトグラフィや結晶解析、あるいはデジタルマイクロスコープやTEM、放射光を用いた材料の変形・破壊挙動のその場観察を用いて疲労メカニズムのマルチスケール調査に取り組んでいます。


お問い合わせ先

耐疲労合金設計グループ
〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
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