非平衡合金設計チーム

NIMS独自理論で新合金探索

2019.04.01 更新

非平衡合金設計チームでは、(1)拡張型第一原理計算法、(2)エネルギー論による非平衡状態図予測法の、NIMS独自理論を発展・融合させることにより、急冷・等温熱処理における組織変化を予測して、所望の特性を有し積層造形に適した新しいニッケル基耐熱合金を探索します。

専門分野・研究対象


輸送機器や発電・化学プラント等のエネルギー効率向上のため、特性の優れた耐熱合金の開発が求められています。特に、新しい製造方法として注目されている三次元積層造型法では、既存材料ではなく新しい耐熱合金がより優れた特性を示す可能性があります。しかし、従来の経験と勘に基づく試行錯誤的な実験手法のみで新合金を開発するのは非効率的です。これからは、マテリアルズ・インテグレーションの技術を発展させ、ユーザーが所望する特性の材料を少サンプル・短時間・低コストで探し出すことが求められています。
そのためには、(1)実験データのない新しい合金のエネルギーや物性値を評価する方法、(2)広範囲の組成・温度・時間域における組織 (できれば特性も) を容易に迅速に予測する方法を確立する必要があると考えます。そこで非平衡合金設計チームでは、下記のNIMS独自理論を発展・融合させ、ユーザーが所望の特性を有し積層造型に適したニッケル基耐熱合金を探索します。


(1)拡張型第一原理計算法の開発

これまでの第一原理計算は、密度汎関数理論に基づき、ゼロケルビンにおける単一元素・純物質のエネルギー最安定状態を予測するのに用いられてきました。これにモンテカルロ法やクラスター変分法等の統計力学を連携させ、繰り込み (粗視化) の手続を経て、局所的自由エネルギーを合金組成と温度の関数として理論的に評価し、第一原理計算を高温における多元系合金の熱平衡状態予測に応用できるよう拡張します。こうして、実験データのない新しい合金でも、元素番号だけの入力で相安定性や物性値を評価できる方法を開発します。


(2)エネルギー論による非平衡状態図予測

組織自由エネルギー法を用いて過飽和固溶体から平衡状態に至るまでに現れ得る様々な組織形態のエネルギー的階層を評価し、エネルギー最急降下パスより急冷・等温熱処理中の合金の組織変化を予測します。この方法は少ない入力パラメータと容易な理論および計算で組織変化が予測できることから、多元系合金の広い組成・温度・時間範囲における非平衡状態図の計算に適しています。様々な条件の非平衡状態図を計算することで、合金組成・熱処理プロセスと組織変化 (および特性) の関係を示すデータベースを構築することで、所望の組織 (および特性) から最適な合金組成を探索する逆問題に挑戦します。


お問い合わせ先

非平衡合金設計チーム
〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
電話:029-859-2162
E-Mail: TODA.Yoshiaki=nims.go.jp([ = ] を [ @ ] にしてください)