第27回 GREENオープンセミナー

開催日: 2013.04.24 終了


北海道大学触媒化学研究センターより、叶 深准教授をお迎えして次の演題でご講演いただきます。
皆さまのご参加を、心よりお待ちしております。

Abstract

リチウムイオン電池の電極溶液界面のその場構造解明


 リチウムイオン電池(LIB)は種々の二次電池の中で高いエネルギー密度を示し,広い分野に応用されており,次世代自動車用高性能蓄電池においても中心的な存在となっている1,2.高性能かつ安全性が高いLIBを開発するために,これまでに新規電極材料の開発と生産技術の向上とともに電池性能が飛躍的に改善してきたが,LIBの電極と溶液の界面構造と電池の特性・劣化との相関についてまだ十分に解明されていない現状である3.本研究では,LIBの電極 - 溶液界面の構造評価に,界面分子構造に高い選択性と感度を示す二次非線形振動分光法である和周波発生(SFG)分光法の適用を試み,新しい知見を得ている4,5.LIBをはじめ,より高エネルギー密度の金属空気電池などの二次電池の電極溶液界面の構造評価と制御への活用にも期待される.

 本研究はブロードバンドSFG分光システムが用い,LIBの電極材料と有機電解液との界面構造をその場で調べた.正極材料のコバルト酸リチウム(LiCoO2)の薄膜をLPD法により作成した.負極のカーボン膜の作成を試みた.溶液はエチレンカルボナート(EC),プロピレンカルボナート(PC),炭酸ジメチル(DMC),炭酸ジエチル(DEC)等の単一または混合溶媒に,LiClO4またはLiPF6を入れて使用した.セルのセットアップや溶液調整・交換はグローブボックス内に行われた.電気化学測定では,参照極と対極はリチウムを用いた.

 上図にはPC溶媒中にLiCoO2表面で観測されたspsとssp偏光状態のSFGスペクトルを示す (○ : 実測値,実線 : フィッティング)4.PCのバルクでは,中心対称性を持ち,SFG信号が観測されないことから, LiCoO2との界面において,PCが配向されていることを示唆する.点線に示すように,1830と1780 cm–1に二つの振動モードが得られ,LiCoO2電極表面に配向されるPCのC=O伸縮振動によるものである.詳細な解析から, PC分子はC=O結合をLiCoO2表面に向いて吸着するもの(1780 cm–1)と遠さかるもの(1830 cm–1)があることが推察された.さらに,他の電解質溶液との界面構造についても調べたが,いずれの溶媒分子はLiCoO2電極表面に一定な秩序をもち吸着されることが分かった5.特に興味深いことは,EC分子を含む混合溶媒中において,ECが選択的にLiCoO2表面に吸着されたことが観測された5.これらの結果の詳細について報告する.


参考文献: (1) Mizushima, K.; Jones, P. C.; Wiseman, P. J.; Goodenough, J. B. Mat. Res. Bull. 1980, 15,783. (2) Goodenough, J. B.; Kim, Y. Chem. Mater. 2010, 22, 587. (3) Xu, K. Chem. Rev. 2004, 104, 4303. (4) Liu, H.; Tong, Y.; Kuwata, N.; Osawa, M.; Kawamura, J.; Ye, S. J. Phys. Chem. C (Letter) 2009, 113,20531. (5) Yu, L.; Liu, H.; Wang, Y.; Kuwata, N.; Osawa, M.; Kawamura, J.; Ye, S. Angew. Chem. Int.Ed. 2013, DOI: 10.1002/anie.201209976.


イベント・セミナーデータ

イベント・セミナー名
第27回 GREENオープンセミナー
会場
並木地区 共同研究棟4F ゼミナール室
開催日: 時間
2013.04.24
15:00-16:00

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ナノ材料科学環境拠点

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