開発技術

人手をかけずに使用済電子機器から「都市鉱石」を製造

小型家電から希少金属を経済ベースで回収するためには、これらの壁を乗り越えられるシステムや技術の開発が必要ですが、4つの壁のうち「分散の壁」と「コストの壁」に挑む技術をNIMSが民間企業2社と協力して開発しました。一つは、小型電子機器を簡単に解体し内部の電子基板などを取り出せるようにする小型電子機器等破解装置で、もうひとつは破壊された電子機器からそのまま都市鉱石を作り出す3次元ボールミル装置です。

小型電子機器等破解装置

回転機構による“ねじり力”で、部品を判別可能な状態で解体

「破解」といっても、“破砕”のように何もかも粉々にするのではなく、“分解”のようにある程度筐体部や基板部や部品などが区別できる状態に解体できることから名付けた造語で、NIMSが有限会社押鐘と共同で開発した写真の装置(図1)は、上部投入口から小型電子機器を入れ、内部の回転機構で挿入物にねじり力を与えて壊していくものです。
図1 左:小型電子機器等破解装置(※台車に載せています) 右:破解装置の回転機構概略図画像図1 左:小型電子機器等破解装置(※台車に載せています) 右:破解装置の回転機構概略図
図2 小型電子機器等破解装置で解体された携帯電話画像図2 小型電子機器等破解装置で解体された携帯電話 (クリックで拡大)
小型電子機器に通常はかからないねじれ力を与えることで、そのねじ部周辺やはめ込み部など、機器の構造的に弱い部分から破断していくため、図2のように基板や部品など部材の原形を比較的保持しながら、部材毎に分離されたような状態に破解することが可能です。
なお本装置は、携帯電話機以外の小型家電にも有効で、例えばコンパクトデジタルカメラやACアダプター電源なども破解可能です。

さらに詳しい情報は、2009年12月17日にNIMS元素戦略センターより発表したプレスリリース記事とその配布資料をご覧ください。


3次元(3D)ボールミル

軽便な三次元ミルで チップ類の剥離・粉砕を効率化

図3 三次元ボールミル画像図3 三次元ボールミル
写真(図3)は、破解した小型家電機器の基板などに実装されている半導体チップやメッキなどを剥離・粉砕して、筐体や基盤材などの大量の片状物と分ける三次元ボールミル装置です。有限会社ナガオシステムが開発した三次元回転機構をボールミルの回転機構として採用、そこで得られる全方向からのランダムなボールの衝突で、基板上に実装されたチップやメッキ等を効果的に離脱・粉砕させます。ボールミルには、方向の固定された第一軸と、その軸と交差して軸方向自体が第一軸により回転を与えられながら、その軸周りにも回転する第二軸の二つの回転軸があります。

第一軸のみの回転の場合、水平軸を持って回転する普通のボールミルのポットを球形にしただけで、回転速度を上げるとボールは遠心力で壁に張り付いてしまいますが、そこに第二軸の回転を与えると、別方向の遠心力が働き、ボールがポットの中でランダムに動くようになります。なお、この動きは第一軸と第二軸の回転数の比を調整することで変えることができます。
破解した携帯電話機の部材をこのこのボールミルで処理した場合の処理前/後の写真が図4で、基板からチップやメッキははがれおちて粉末状の都市鉱石が得られているのが分かります。

こちらの詳細情報についても、前述のプレスリリース記事をご覧ください。
図4 破解機で事前に解体した携帯電話2台分の部材のボールミル使用前(左)・使用後(中)と、取り出した粉末状になった都市鉱石写真。画像図4 破解機で事前に解体した携帯電話2台分の部材のボールミル使用前(左)・使用後(中)と、取り出した粉末状になった都市鉱石写真。

今後の展開

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小型電子機器破解機および都市鉱石製造用三次元ボールミルは、いずれも分散型の小型電子機器の処理に適した装置です。地方都市や行政区などで少量づつ集まってくる小型電子機器を、設備投資を極力抑えながら小規模にかつ人件費を削減して処理していくシステムに適用することができます。

本コンテンツでは、都市鉱石として希少金属濃度を高めた粉末を製造し、次の処理に持っていくことを意識していますが、破解機を用いて破解した小型電子機器を手選別など従来の方法と結びつけて使うことも可能で、また、3次元ボールミルは、使用済製品だけでなくメッキの剥離などの工程内リサイクルにも利用が期待できると言えます。


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