第9回 ナノテクノロジー基盤領域研究交流会

開催日: 2008.10.02 終了


セミナー内容

講演内容
講演1 「偏極ヘリウムの電子過程と表面スピン」
山内 泰
(独) 物質・材料研究機構 量子ビームセンター 原子ビームグループ

偏極ヘリウムの電子過程はスピンの影響を受け、最表面のスピンあるいは磁性を反映した脱励起現象が観測される。脱励起によって電子を放出する場合、放出電 子のエネルギー分布が特定スピンの電子状態密度の情報をもたらす。脱励起によって吸着子が脱離する場合、スピンを特定した表面反応と見ることができる。脱 励起せずに生き残って散乱される場合もまた電子状態の情報をもたらす。偏極ビーム生成技術とスピン依存脱励起現象について概説した後、スピン素子で注目さ れる強磁性体表面での吸着系に誘起されるスピン偏極の解析例を紹介する。偏極技術は、現在、イオンや分子ビームに展開している。

講演2 「有機結晶のスピン依存伝導と高温超伝導接合の量子効果」
山口 尚秀
(独) 物質・材料研究機構 ナノシステム機能センター ナノフロンティア材料グループ

相関電子系絶縁体である有機結晶q-(BEDT-TTF)2CsZn(SCN)4において見つけた特異な磁気抵抗効果について報告する。温度を下げるとともに、この結晶の抵抗は熱活性化型で増大する。低温で磁場をかけるとさらに抵抗が増大する。この効果は非常に大きく、T=0.1 K, B=17 Tにおける磁気抵抗比は10000%程度である。この磁気抵抗は磁場の方位に依存しないため、電子の軌道効果ではなくスピンに関連した効果であると考えられる。また、伝導度s はs (B)/s (B=0)=1/[1+(mB B/2kBT)2]のように、mBB/kBTの簡単な関数で書ける。伝導する電子のスピンと局在スピン (どちらもBEDT-TTFのHOMOを占める) が高磁場中で揃い、パウリの原理によって伝導が抑制されるのではないかと考えている。高温超伝導体ウィスカーからなるジョセフソン接合における量子効果についても講演する。

講演3 「コヒーレントフォノンを利用した超高速電子格子相互作用の研究」
石岡 邦江
(独) 物質・材料研究機構 ナノ計測センター 超高速現象計測グループ

コヒーレント光学フォノンとは、巨視的な空間にわたって同位相で振動する結晶格子の振動である。サブ10フェムト秒 (fs) の光パルスを結晶表面に照射することにより、50テラヘルツ (THz) までの高周波数のコヒーレントフォノンを「瞬間的」に励起することができる。これによりフォノンの「寿命」を直接測定できるだけでなく、励起電子とフォノンとの相互作用を100fs以下の時間スケールで追うことができる。さらに、極端に非平衡な条件下での電子およびフォノンの超高速時間発展を明らかにすることにより、非熱的な相転移の制御など、新物質創製や新奇な機能の発現に寄与する可能性が期待されている。


イベント・セミナーデータ

イベント・セミナー名
第9回 ナノテクノロジー基盤領域研究交流会
会場
独立行政法人物質・材料研究機構 千現地区 研究本館 第一会議室
〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
開催日: 時間
2008.10.02
15:00 - 17:00
主催
独立行政法人物質・材料研究機構
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