第8回 ナノテクノロジー基盤領域研究交流会

開催日: 2008.06.26 終了


セミナー内容

講演内容
講演1 「材料開発にNMRがどう役立つのか?」
清水 禎
(独) 物質・材料研究機構 ナノ計測センター 強磁場NMRグループ

NMRと言えば従来は有機化学のための分析装置だった。薬品や食品などの分析においてNMRは圧倒的な役割を果たしてきた。他方、無機物の分野においてNMRが活躍した例は非常に少ない。周期表の約9割の元素に対してNMRが適用可能であるにも係わらず、これは一体どうしてであろうか?従来のNMRは磁場が低かったために、感度と分解能の点で有利な水素核と炭素核など一部の元素に限定的となっていた。しかし、20テスラ以上の強磁場になるとNMRで分析可能になる元素の種類は劇的に増える。現在の技術的進歩により、無機物など幅広い材料分野にNMRが適用可能となってきた。NMRが得意なことは局所的な化学構造の解明である。このことは有機物であろうと無機物であろうと変わらない。分子内の構造、たとえば最近接原子から第2近接原子くらいまでの化学構造、に関する情報を得ることができる。特に、非晶質物質においても局所構造の情報が得られる点が、他の分析技術と比較した時の大きい特徴である。この特徴を利用して、アモルファスや触媒などの材料の局所構造解析に応用が始まっている。

講演2 「高温超伝導ジョセフソン渦糸系の安定渦糸構造」
野々村 禎彦
(独) 物質・材料研究機構 計算科学センター 強相関モデリンググループ

層状構造を持つ高温超伝導物質の超伝導面に平行に磁場を印可し、絶縁体層に渦糸が侵入したジョセフソン渦糸系は、渦糸フロー抵抗の振動現象やテラヘルツ領域の電磁波発振など、多様な振舞で注目されている。本講演では、これらの振舞の基礎となる、基底状態の安定渦糸構造を詳しく調べた研究を報告する。特に磁場の弱い領域では、三角格子を層状構造に合わせて回転させたさまざまな構造が現れるが、エネルギー曲面の形状を眺めると、これらの構造を統一的に理解できることがわかった。時間に余裕があれば、磁場方向を超伝導面から傾けた場合の渦糸構造の変化にも触れたい。

Y. Nonomura and X. Hu, Phys. Rev. B 74, 024504 (2006).
Y. Nonomura and X. Hu, Physica C 412-414, 385 (2004).

講演3 「光を伝播する分子ナノファイバー : 基礎物性とデバイス応用」
高澤 健
(独) 物質・材料研究機構 量子ドットセンター ナノ物性グループ

光回路は電気回路を超える高速化・高集積化が可能なため、高性能マイクロプロセッサや通信機器へ の応用が期待されている。光集積回路の実現には、光信号をナノからミクロンの領域で伝播・操作する光配線 (光導波路) の開発が不可欠である。最近我々は、 有機色素分子を水溶液中で自己組織化させることで、ナノサイズの分子ファイバーを合成した。この分子ファイバーは、光で励起すると自身のルミネッセンスを ファイバーの全長に渡って250ミクロン以上高効率で伝播する。また有機物の自己組織化構造体であるため構造的な柔軟性く、サブから数ミクロンの曲率半径 で曲げることができ、鋭く曲げても高効率で光を伝播する。発表では、基礎的な光伝播特性に加えて分子ファイバーを操作して光デバイスを構築する試みについ ても述べる。


イベント・セミナーデータ

イベント・セミナー名
第8回 ナノテクノロジー基盤領域研究交流会
会場
独立行政法人物質・材料研究機構 千現地区 研究本館 第一会議室
〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
開催日: 時間
2008.06.26
15:00 - 17:00
主催
独立行政法人物質・材料研究機構
2024.04
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