「単一の量子ドットを見る・操作する」 - 黒田 隆
- (独) 物質・材料研究機構 量子ドットセンター ナノフォトニクスグループ
自己形成的な手法を用いて、格子欠陥や不純物が全く存在しない高品質の半導体量子ドットが、しかも大量に創製できるようになりました。数多くの量子ドットを対象に巨視的な光学スペクトルを観測すると、量子ドットのサイズや形状が不均一であるために、線幅が広く特徴のないスペクトルを得るだけとなります。一方、顕微鏡下で1個の量子ドットを選び出し、そこからの微小な光学信号を検知すると、固体でありながらも真空中に孤立した原子に似た、ごく先鋭なスペクトルを示します。量子ドットに局在した電子は、外部との相互作用が絶たれるために、コヒーレンスが長時間に渡って持続し、コヒーレンスの緩和時間が、バルクや2次元量子井戸に比べて2桁以上延びます。このような特性は、量子ドットにレーザー光を照射することで、非線形/多段的な量子操作が可能となることを示唆しています。液滴エピ手法で作製した量子ドットを用いた、単一量子ドットの精密分光および、光学遷移を用いた量子計算への試みについて紹介します。 |