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磁場で電気分極を反転させる

普通の強誘電体では電場によって電気分極の方向が反転します。 一方、普通の強磁性体では磁場によって磁化の方向が反転します。しかし、スピネル型クロマイトCoCr2O4という物質では、電気分極と磁化が同時に発現し、さらに磁場で電気分極が反転するという特異な現象が現れることを発見しました。この物質は、コニカル磁気構造というスピンが円錐状に回転する特殊な磁気構造になります。この磁気構造において、磁化と電気分極が同時に発現し、このとき、磁場によって磁化を反転させるのと同時に、電気分極も反転します。これは磁化と電気分極のドメイン壁が強く結合していることを示唆しています。

[関連論文]
Magnetic Reversal of the Ferroelectric Polarization in a Multiferroic Spinel Oxide
Y. Yamasaki, S. Miyasaka, Y. Kaneko, J.-P. He, T. Arima, and Y. Tokura
Physical Review Letters 96, 207204 (2006) 


電場でスピンの回転方向を制御

ペロブスカイト型マンガン酸化物TbMnO3は、らせん磁気構造への相転移に伴なって電気分極が発現します。このとき電気分極の方向はスピンの巻き方(スピンヘリシティ)、つまり時計回りか反時計回りかのどちらに巻いているかによって決まると考えられます。本研究では、偏極中性子散乱実験という実験手法を用いて電気分極の方向とスピンヘリシティの関係を調べました。電場を印加しながら冷却して、電気分極が単一ドメインの時に偏極中性子散乱を測定すると、入射中性子スピンがアップ(↑)とダウン(↓)の時で衛星磁気反射強度が異なることを観測しました。この磁気反射の強弱関係は、電気分極の方向や衛星磁気反射の符号で反転します。この振る舞いは、電気分極の方向とらせん磁気構造におけるスピンの巻き方が一対一に対応していることを示唆しています。つまり、電場だけでスピンの巻き方が制御できるということを本研究で初めて実証しました。

[関連論文]
Electric Control of Spin Helicity in a Magnetic Ferroelectric
Y. Yamasaki, H. Sagayama, T. Goto, M. Matsuura, K. Hirota, T. Arima, and Y. Tokura
Physical Review Letters 98, 147204 (2007)


磁場で電気分極が回転する起源を解明

ペロブスカイト型マンガン酸化物TbMnO3は、磁場を印加すると電気分極の方向がc軸方向からa軸方向へと90度回転する現象が知られています(電気分極フロップ現象)。本研究では、この電気分極の回転に伴う磁気構造の変化を調べるためにGd0.7Tb0.3MnO3という物質において偏極中性子散乱実験、および磁気構造解析実験を行いました。TbMnO3ではa軸方向の電気分極をもつ強誘電相は15Kにおいて7Tもの磁場を印加しないと発現しませんが、本研究対象であるGd0.7Tb0.3MnO3では磁場がない状態においてもa軸方向の電気分極が発現しています。このために磁場中では実験が困難な偏極中性子散乱実験や磁気構造解析が可能になり、a軸方向に電気分極をもつ強誘電相の磁気構造を明らかにできます。
 実験の結果、a軸方向に電気分極を有する強誘電相ではMnスピンがab面内をらせん状に回転する構造になっていることが分かりました。TbMnO3のc軸方向に電気分極を有する強誘電相ではMnスピンがbc面内を回転する構造なので、磁場による電気分極の回転現象はMnスピンのらせん面がbc面からab面へと回転することによって発現することを明らかにしました。 
 

[関連論文]
Cycloidal Spin Order in the a-axis Polarized Ferroelectric Phase of Orthorhombic Perovskite Manganite
Y. Yamasaki, H. Sagayama, N. Abe, T. Arima, K. Sasai, M. Matsuura, K. Hirota, D. Okuyama, Y. Noda, Y. Tokura
Physical Review Letters 101, 097204 (2008)