史上最強のスピン - フォノン結合を観測

~情報通信・エレクトロニクスの機能性材料の高性能化に新たな可能性~

2015.12.03


国立研究開発法人 物質・材料研究機構 (NIMS)

NIMSの研究チームは、米国オークリッジ国立研究所と共同で、2009年にNIMSが世界で最初に合成したオスミウム酸化物が、観測史上最強のスピン - フォノン結合を示すことを明らかにしました。

概要

  1. 国立研究開発法人物質・材料研究機構 (NIMS) 超伝導物性ユニットの山浦一成 主席研究員らの研究チームは、米国オークリッジ国立研究所のスチュアート・カルダー博士らと共同で、2009年にNIMSが世界で最初に合成したオスミウム酸化物が、観測史上最強のスピン - フォノン結合を示すことを明らかにしました。一般的に、物質中の様々な特性が強固に結合するほど新しい機能性材料の開発に有利と言われており、今回の成果は、情報通信やエレクトロニクス分野での次世代材料の新たな候補につながることが期待されます。
  2. 白金族元素やその化合物は、触媒として広く利用されている一方で、コストが高いこともあり触媒以外の機能性についてはあまり研究が進んでいません。そんななかNIMSの研究チームは、2009年に合成したオスミウム酸化物が、室温より高い温度 (∼140 ℃) で特異な磁気転移を示すことを発見し、触媒以外の産業的・工業的機能性の開拓に挑戦してきました。
  3. 今回、オスミウム酸化物のスピン - フォノン結合を観測した結果、かつて観測されたことがない最強の結合であることが明らかになりました。スピン - フォノン結合が強いのは、酸化物固体の中でオスミウムの最外殻電子軌道が空間的に大きく張り出しているためだと考えられます。この構造的な特徴は、白金族元素に共通する特徴のため、オスミウム以外の白金族元素の化合物も強いスピン - フォノン結合を持つ可能性が高いことを示唆しています。
  4. スピン - フォノン結合は磁性 (スピン) と結晶格子系 (フォノン) の相互作用の強度を直接的に表しています。スピンとフォノンの相互作用が強いほど、例えばマルチフェロイクス材料など磁性と格子系の結合が重要な材料の開発に有利だと最近の研究から示唆されています。マルチフェロイクス材料は、高密度情報記録素子や超高速演算素子を低消費電力で実現できるとして期待が高まっている画期的な機能性材料の候補であり、本研究成果はその実現に向けた大きな一歩と考えられます。
  5. 本研究は、NIMS第3期中期計画プロジェクト“先端超伝導材料に関する研究”のもとで実施されました。本研究成果は、オンライン誌“ネイチャーコミュニケーションズ (Nature Communications) ”にて2015年11月26日 (日本時間19:00) に掲載されました。

「プレスリリースの図1 :  オスミウム酸化物 (NaOsO3) の結晶構造の模式図 (a) と単結晶の光学顕微鏡写真 (b)」の画像

プレスリリースの図1 :  オスミウム酸化物 (NaOsO3) の結晶構造の模式図 (a) と単結晶の光学顕微鏡写真 (b)



本件に関するお問い合わせ先

(研究内容に関すること)

国立研究開発法人 物質・材料研究機構 超伝導物性ユニット
主席研究員 山浦 一成 (やまうら かずなり)
TEL: 029-860-4658
E-Mail: yamaura.kazunari=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

(報道・広報に関すること)

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