反強磁性体の磁気冷凍性能を最大にする方法を発見

2014.03.10


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMS若手国際研究センターの田村 亮ICYS-Sengen研究員、先端的共通技術部門理論計算科学ユニットの大野隆央ユニット長、および同部門量子ビームユニットの北澤英明ユニット長は、反強磁性体の磁気冷凍性能を最大限引き出す方法をコンピュータシミュレーションにより発見しました。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝、以下 NIMS) 若手国際研究センター (センター長 : 宮野 健次郎) の田村 亮ICYS-Sengen研究員、先端的共通技術部門理論計算科学ユニットの大野隆央ユニット長、および同部門量子ビームユニットの北澤英明ユニット長は、反強磁性体の磁気冷凍性能を最大限引き出す方法をコンピュータシミュレーションにより発見しました。
  2. 磁気冷凍は、磁性体の磁気熱量効果を用いた冷凍技術であり、気体冷凍に代わる次世代冷凍技術として期待され開発が進んでいます。磁気冷凍が広く実用化されるためには、より高い磁気冷凍性能を持つ新奇磁性材料の開発および、高い磁気冷凍性能を引き出す方法の創出が必要不可欠です。
  3. NIMS、および東京大学物性研究所共同利用のスーパーコンピュータを用いた熱統計力学シミュレーションにより、強磁性体および反強磁性体の示す磁気熱量効果の性質を高精度で得る事に成功しました。その結果、磁気冷凍の研究で従来用いられている、磁場を有限磁場から零磁場まで変化させる手順は、強磁性体の磁気冷凍性能を最大化する手順である事を確認しました。一方で、反強磁性体は強磁性体とは異なる磁気熱量効果を示すため、従来型の磁場印加手順では低い磁気冷凍性能しか得られないことが明らかとなりました。反強磁性体の磁気冷凍性能を最大限引き出すためには、磁場を零磁場まで変化させずに、使用したい温度に依存した一定の有限磁場で止める必要があることを発見しました。
  4. 本発見手順は、反強磁性体に特化したものではなく、非強磁性的な磁気構造を示す一般の磁性体に対しても広く適用可能です。本発見手順を用いることによって、すべての種類の磁性体の磁気冷凍性能を最大限に引き出せる条件で比較する事が可能になります。したがって、磁気冷凍に適した磁性材料開発の可能性が大いに広がる事が期待されます。
  5. 本成果は米国物理学協会速報誌Applied Physics Lettersに掲載予定です。

「プレス資料中の図1 : (左) 強磁性体の磁気構造の模式図。 (右) 反強磁性体の磁気構造の模式図。青色矢印が上向き電子スピン状態を、赤色矢印が下向き電子スピン状態をそれぞれ表しています。また、JabおよびJcは磁性イオン間に働く交換相互作用を表しています。」の画像

プレス資料中の図1 : (左) 強磁性体の磁気構造の模式図。 (右) 反強磁性体の磁気構造の模式図。青色矢印が上向き電子スピン状態を、赤色矢印が下向き電子スピン状態をそれぞれ表しています。また、JabおよびJcは磁性イオン間に働く交換相互作用を表しています。



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量子ビームユニット長
北澤 英明 (Hideaki Kitazawa)
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