パルスレーザー照射による世界初の機能性高分子ナノワイヤー作製技術を開発

分子デバイス開発に飛躍的な促進の可能性

2011.12.21


独立行政法人 物質・材料研究機構

NIMS 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点は、パルスレーザーを照射するだけでその領域にのみ選択的に高分子ナノワイヤーを成長させ、さらにそのナノワイヤーに各種ナノ材料をドーピングさせて様々な機能性を持たせることに世界で初めて成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝) 、国際ナノアーキテクトニクス研究拠点・ナノエレクトロニクス材料ユニット (ユニット長 : 知京 豊裕) の佐々木 道子 博士研究員、後藤 真宏 主幹研究員らは、パルスレーザーを照射するだけでその領域にのみ選択的に高分子ナノワイヤーを成長させた。さらに、そのナノワイヤーに各種ナノ材料をドーピングさせて様々な機能性を持たせることに成功した。これは従来の作製法では実現できなかった、世界初の技術であり、今後発展が期待されるナノデバイスの可能性を大きく広げる成果である。
  2. 高分子ナノワイヤーは、無機材料からなるナノワイヤー類と比べ、産業応用上重要な利点を持っている。柔軟性が非常に高く、光学的にも透明であることから、センサー、発光素子、光スイッチ素子などナノデバイスの新規分野へ幅広い応用が期待されている。しかし、高分子ナノワイヤーを用いたナノデバイスの実用化には解決できていない2つの課題があった。1つはサイズ、もう1つは新機能を持たせるためのさまざまな材料の添加である。今回の研究では、従来の製作法とは全く異なり、レーザー照射のみという非常に簡単な方法で、かつ、この2つの課題を同時に解決した。
  3. ナノデバイスが注目されるのは、サイズを極限まで小さくしたときに初めて発現される量子サイズ効果によって、従来のデバイスでは得られなかった新しい機能が得られることにある。量子サイズ効果を得るには、ナノワイヤー直径数十ナノメートル以下まで細線化する必要があるが、従来の作製法だった鋳型を用いると、直径数百ナノメートルという比較的太いものの作製が限界であった。また、この手法では強い薬剤により、鋳型をエッチング (溶解) して高分子ナノワイヤーを取り出すため、薬剤によりダメージを受けない高分子しか材料に使えなかった。
  4. 今回、研究チームは鋳型を用いず、高度に制御されたレーザーを材料の上に当てるだけで、照射位置にナノワイヤーが伸びるように生成する全く新しい技術を世界に先駆けて開発。さらに、原料にさまざまな材料を添加し、生成されるナノワイヤーにこれまで困難だったさまざまな機能を持たせることも可能にした。
  5. 今回、開発された機能性高分子ナノワイヤーの作製手法は、必要とする任意の機能性ナノ材料と様々な高分子材料へ適用可能であるため、この方法で得られる機能性高分子材料は、今後、ますます発展が期待されるスマートフォンのフレキシブル基板の配線、小型化が求められている携帯機器アンテナにおけるフレキシブルな高透磁率材料としての実用化が期待される。

「プレス資料中の図3.酸化鉄ナノ粒子を含んだポリスチレンナノワイヤーの走査透過電子顕微鏡像 (黄矢印はナノワイヤー表面、赤矢印はナノワイヤー内部に存在する酸化鉄ナノ粒子を示す)  (協力 : 株式会社日立ハイテクノロジーズ) 」の画像

プレス資料中の図3.酸化鉄ナノ粒子を含んだポリスチレンナノワイヤーの走査透過電子顕微鏡像 (黄矢印はナノワイヤー表面、赤矢印はナノワイヤー内部に存在する酸化鉄ナノ粒子を示す) (協力 : 株式会社日立ハイテクノロジーズ)



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独立行政法人物質・材料研究機構
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ナノエレクトロニクス材料ユニット
半導体デバイス材料グループ

佐々木 道子 (ささき みちこ)
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