世界で初めて窒化ホウ素ナノチューブの強度測定に成功

2010.09.14


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMSの国際ナノアーキテクトニクス研究拠点は、高性能な電子顕微鏡を用いて、窒化ホウ素ナノチューブ (BNNT) のナノ引張試験の測定に世界で初めて成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝) の国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (拠点長 : 青野 正和) のゴルバーグ主任研究者らの研究グループは、高性能な電子顕微鏡を用いて、窒化ホウ素ナノチューブ (BNNT) 1)のナノ引張試験の測定に世界で初めて成功した。BNNTの引張強度2)が鉄鋼の強度の約15倍以上の約30 GPa (ギガパスカル) 3)、ヤング率4)が900GPaとダイヤモンド(1,000GPa)に匹敵する大きな値を示すことを見出した。
  2. BNNTはホウ素 (B) と窒素 (N) から成るカーボンナノチューブと同じような円筒状の網目構造をしているが、カーボンナノチューブに比べて、耐熱性、耐酸化性や耐薬品性など化学的により安定な材料として注目されている。また、BNNTはカーボンナノチューブと同じように優れた機械的な性質を持つと理論的に予想されているが、その測定が困難であったためにこれまでにBNNTの強度測定はなされてこなかった。
  3. 今回、特別設計のナノ引張試験装置5)を高性能な電子顕微鏡 (300 kVのTEMで分解能0.17 nm) に組み込み、BNNTの強度測定に世界で初めて成功した。測定したBNNTは直径がわずか10-50ナノメートル、長さが数百ナノメートルの多層ナノチューブ。BNNTをロウの接着剤によって、ナノチューブの両端を、一方の側にある力検出カンチレバーともう一方の側にあるピエゾモーター駆動の金属棒に固定することによって、BNNTの一本の強度測定に測成功した。
  4. 14個のBNNTの単一の応力 - ひずみ曲線の測定から、BNNTの引張強度やヤング率が求められた。BNNTの引張強度はチューブの形態 (チューブ径や長さ) などの違いにより変化するが、最大で約33 GPaという大きな値を示した。一方、ヤング率は900 GPaと極めて大きな値を持つことが明らかとなった。この値はダイヤモンドのヤング率 (1,000 GPa) に匹敵するものである。
  5. 優れた機械的特性を有するBNNTは絶縁性の高強度なフィラー素材として、高分子複合材料、セラミック複合材料または金属複合材料などの様々な機械的強化材、ナノメカニカルシステムの主要部品などへの応用が期待される。

「プレス資料中の図1 (左) 透過型電子顕微鏡内(TEM)でのナノ引張試験下において、AFMカンチレバー (左側接点) とタングステンナノワイヤー (右側接点) の間に固定された単一の多層窒化ホウ素ナノチューブ (BNNT) 。 (右) BNNTの応力 - ひずみ曲線。この図から、BNNTの引張強度が33 GPa、ヤング率が900GPaが求められた。」の画像

プレス資料中の図1
(左) 透過型電子顕微鏡内(TEM)でのナノ引張試験下において、AFMカンチレバー (左側接点) と
タングステンナノワイヤー (右側接点) の間に固定された単一の多層窒化ホウ素ナノチューブ (BNNT) 。
(右) BNNTの応力 - ひずみ曲線。この図から、BNNTの引張強度が33 GPa、ヤング率が900GPaが求められた。



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