NIMSコンファレンスにおけるNIMS賞授賞者について

2007.07.06


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMSは2006年から第2期に入ったのを機に、材料科学・技術に関して討論するNIMSコンファレンスの内容を刷新しました。今年度は7月13日~16日につくば国際会議場において開催されます。

概要

独立行政法人物質・材料研究機構(理事長 : 岸 輝雄 (以下、NIMS) )は、30年以上の歴史をもつ金属材料と無機材料に関する2つの国立研究所が合併し、材料研究のための日本最大の研究所として2001年に設立されました。第1期の5年を経て2006年から第2期に入りました。この機会に、4年間にわたり材料科学・技術に関して討論して参りましたNIMSコンファレンスの内容を刷新し、今年度は7月11日~13日につくば国際会議場において開催されます。

今年度からのNIMSコンファレンスの大きな特徴は、物質・材料に関わる科学・技術において飛躍的な進歩を過去数年間に成し遂げた個人もしくはグループを厳正に選考し、「材料科学・技術で最近の大きなブレークスルーを称えるNIMS賞(NIMS Award for Recent Breakthrough in Materials Science and Technology)」を授与することにあります。NIMS賞の受賞者は、世界各国の本分野におけるトップ科学者から推薦を受けた候補者から中立有識者の委員会により選考されました。

NIMSコンファレンスにおいて授与されるNIMS賞を物質・材料科学研究に従事される研究者が是非獲得したいと励むにふさわしい権威ある国際賞に育てていくため、賞としてNIMS由来の材料を用いて作製したメダルと共に副賞として任意団体「NIMSコンファレンスを支援する会」のご好意の賞金100万円を授与します。別添に2007年のNIMS賞の受賞者のお名前、業績を記します。

2007年NIMS賞受賞者

「ウイリアム・バトラー教授」の画像

ウイリアム・バトラー教授


受賞者 :
ウイリアム・バトラー、米国アラバマ大学教授
業績タイトル :
Fe/MgO/Fe接合における巨大磁気抵抗の理論的予言
業績説明 :
磁気記録では超高密度化に伴ない記録媒体、書き込み、読み出しが益々難しくなっている。特に読み出しにはさらなる高感度化と高分解能が求められている。この目的に磁気トンネル接合が研究、実用化されている。また、磁気トンネル接合は不揮発性磁気メモリのMRAMにも使われている。このような磁気トンネル接合には従来はアルミナ膜などの非晶質絶縁膜を用いていたが、バトラー教授は、MgO(001)単結晶薄膜を通したトンネル伝導の第一原理計算を行い、Fe/MgO/Fe(001)接合における巨大磁気抵抗(TMR)を初めて理論的に予言した。すなわち、MgO(001)層を通したコヒーレントなトンネル伝導が可能であり、巨大なTMRを示すこと、TMRがMgO膜厚とともに増加すること、さらにMgO膜厚の関数としてTMRが振動すること、等を理論的に予言し、2001年に米国物理学会雑誌のフィジカル・レビューB誌に報告した。その後、2004年に産総研の湯浅氏とIBMのParkin氏がほぼ同時期にこの薄膜系を用いて、室温でそれぞれ180%、220%の巨大TMRを報告し、この理論的予言の正しさが実証された。現在は更にTMRは500%以上を越え、スピントロニクスデバイスの高機能化と新分野創製への寄与が期待されている。ここに、物質・材料研究機構は、NIMSコンファレンス開催の機会に、後世に磁気記録材料に大きなブレークスルーをもたらしたバトラー教授の卓越した業績をNIMS賞の授与により称えるものである。

お問い合わせ先

本件に関する問合せ先

独立行政法人物質・材料研究機構
国際室
井上 宏子 (いのうえ ひろこ)
〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
TEL: 029-859-2032
E-Mail: INOUE.Hiroko=nims.go.jp
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