歪ガラス合金に形状記憶効果を発見

形状記憶合金の常識を覆す

2006.12.01


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMSセンサ材料センターの任 暁兵グループリーダーらは、中国西安交通大学と共同で、歪ガラス合金において形状記憶効果および超弾性を世界で始めて発見し、数十年間信じられてきた形状記憶合金の必要条件を覆した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) センサ材料センター (センター長 : 羽田 肇) のセンサ物理グループの任 暁兵 グループリーダーらは、中国西安交通大学の融合材料研究センターと共同で、歪ガラス合金において形状記憶効果および超弾性を世界で始めて発見した。この発見によって、数十年間信じられてきた形状記憶合金の必要条件 (マルテンサイト変態する合金) が覆されると共に、歪ガラスは広く利用されている形状記憶合金の種類を大幅に拡大させる可能性がある。この新しい形状記憶効果の応用も期待される。
  2. 形状記憶合金は加熱によって元の形状に戻るという不思議な合金であり、電化製品、医療、宇宙、航空などの分野に広く応用されている。形状記憶効果を決めるのは、この種の合金に特有な構造変態−マルテンサイト変態の存在である。これまでの数十年間に形状記憶合金の探索はマルテンサイト変態の存在する合金・組成に限って行われてきており、マルテンサイト変態しない合金・組成における形状記憶効果の存在する可能性は考えられていなかった。
  3. 任グループリーダーらの最近の研究により、マルテンサイト変態をしない合金組成に、strain glass (歪ガラス) という新しい物質状態の存在を発見した。今回の研究では、マルテンサイト変態しない組成のTi-51.5Ni歪ガラス合金 (固溶材1) ) において形状記憶効果及び7.5%に及ぶ巨大な超弾性を発見した。この新しい形状記憶効果と超弾性の機構は従来の形状記憶合金と異なり、歪ガラスからマルテンサイトへの変態という新しい物理的な機構によるものであることが示された。
  4. 今回の発見によって、数十年間信じられてきた形状記憶合金の必要条件−マルテンサイト変態する合金−を覆すことになり、科学的な意味は大きい。また、これまで狭かった形状記憶合金の組成範囲が歪ガラスによって大きく拡大されることになる。この新種の形状記憶合金の新しい応用の可能性も期待される。
  5. 本研究の成果は12月1日に発行の米国物理誌Physical Review Lettersに発表される。

「プレス資料中の図1: 歪ガラスTi−51.5Ni合金における (a) 形状記憶効果 (加熱による形状回復) 、 (b) 超弾性効果」の画像

プレス資料中の図1: 歪ガラスTi−51.5Ni合金における (a) 形状記憶効果 (加熱による形状回復) 、 (b) 超弾性効果



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